台湾軍事介入は「計画的失言」?バイデン大統領“捨て身の情報戦”の代償Photo:It Gets Better Project/gettyimages

バイデン大統領の3回目の「失言」で魂胆バレた?

「頼りないおじいちゃんかと思っていたけど、実はなかなかの策士じゃないか!」
「失言のふりをして中国を牽制するなんてかっこいい!」

 バイデン米大統領の台湾有事をめぐる「計画的失言」が称賛を集めている。

 事の発端は今月23日、日米共同記者会見で、中国が台湾侵攻をした場合、軍事介入をするのかと質問され、元気よく「イエス!」と即答したことだった。

 これまでアメリカは台湾の自衛を支える一方で、自国の軍事介入は明言しないという「あいまい戦略」をとってきた。政府のスタンスと異なるということで、ホワイトハウスもすぐに火消しに奔走。バイデン氏自身も翌日、報道陣に同じ質問をされると「ノー!」と即答。さらに、「政策は全く変わっていない。それについてはきのうも言った通りだ」と耳を疑うような発言をした。

 われわれ一般庶民の感覚からすれば、「昨日は軍事侵攻するって言ったばかりでしょ、もう忘れちゃったの?」と御年79歳の大統領の「もの忘れ」具合にイラッとするが、国際インテリジェンスの専門家によれば、実はこのおとぼけぶりは、すべて「計算」だというのだ。

 バイデン大統領といえば、アフガニスタン撤退や、ロシアのウクライナ侵攻前に早々と「軍事介入しない」と宣言するなど「弱腰」が批判されてきた。その苦い経験をいかして中国に対しては、「失言」の体裁で、軍事介入を辞さないという強気の姿勢を見せているというのだ。

 そんな「計画的失言」説の根拠となっているのが、これが「3回目」ということだ。

 つまり、「台湾有事で軍事介入する」というのは、これまでバイデン大統領は2回発言しており、いずれもすぐにホワイトハウスが火消しして、ご本人も「そんなこと言ってないでしょ」としらばっくれている。

 そのパターンが今回も繰り返されたということは、もはやこれは「失言」などではなく、失言の体裁をとった「非公式な意志表明」と受け取るべきだ、というのが専門家の見解なのだ。

 こういう高度な情報戦を仕掛けられるのがアメリカのすごいところなのだが、一方で「よくやるな」と驚く部分もある。これはバイデン大統領にとって「自滅」しかねない、リスキーな手法だからだ。