精神科医が一番響いた言葉

 本書で一番、心にグサッと刺さった言葉はこれです。

別に出世から遠のいちゃっても全然オッケーですよ

 一流大学を出て、一流企業に就職するのが幸せ。

 企業に就職したら、出世して昇進・昇給するのが幸せ。

 そうした“常識”に縛られている人はとても多い。

 精神科医の私の経験から言えることは、それらの常識どおりに行動しても、決して幸せにはなれない、ということです。

「一流大学に落ちてしまった」
「いい会社に就職できなかった」

 と言って落ち込む人は多く、なかには「うつ病」になる人もいます。

 自分でいろいろ調べればわかりますが、日本全国には、高卒でスタートアップ企業の社長として大成功している人も山ほどいます。

 同様に、会社で「出世できない」といって、落ち込む人もたくさんいます。

「いったん企業に就職したなら、出世して昇進・昇給するのが幸せ」という常識に縛られるから、それが達成できないとわかると、落ち込むわけです。

 つまり、落ち込む原因を自分で作っているということ!

 自分で自分を苦しめているわけです。

 インターネットが存在しなかった時代は、会社というものが、コミュニティー(自己実現の場)の大部分になっていました。

 しかし、令和のいま、インターネットをうまく活用すれば、会社で認められなくても、会社以上の収入を得ることも可能。ネット上のコミュニティで承認欲求を得ることも可能です。

「出世なんかしなくてもオッケーですよ」に
救われる瞬間

 それに気づけるのが、サラタメさんの『シン・サラリーマン』にある、

出世なんかしなくてもオッケーですよ

 という言葉です。

 私のように、サラリーマンとして会社に一度も勤めたことのない人間が言っても、全く説得力はありません。

 しかしながら、サラリーマンとして何年も勤め、YouTubeでの収入もかなり増えているにもかかわらず、サラリーマンを続けているサラタメさんが言うから心に響くのではないでしょうか。

 出世しなくてもいい。
 会社だけがすべてではない。

 と心から思えた瞬間、会社がつらいという気持ちはなくなるのです。

 会社に行かなくてはいけない。
 仕事をやらなくてはいけない。
 会社を絶対に辞められない。

 という義務感、強制感、やらされ感が、ストレスを何倍にも増幅させます。

 副業収入を得たり、小さくても投資によるリターンが得られるようになると、仕事にも心にも余裕が出てきて、なにごとにもポジティブに考えられるようになります。

 仕事だけ頑張れば成功できる、幸せになれるという時代は、すでに終わっています。

 しかし、それに気づいていないサラリーマンが9割ではないでしょうか。

 既存のサラリーマン常識に縛られているせいで、自らのストレスを増やしている人が多すぎる。

 そんな「古くさい常識」をぶち壊し、令和時代の新しいサラリーマンの生き方を指し示しているのが、『シン・サラリーマン』なのです。今すぐ読んでみてください。

【評者】樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。