「闇」ファッションの流行と
マスク補正への渇望

 細かい部分ははしょるが、若者世代では“闇”や“病的”といったテイストが、以前より好まれるようになってきている。たとえばJ-POPの歌詞の変遷を考えてみていただきたい。一昔前までは明るく希望に満ちた、「明日に向かって、さあYUKOUZE!」といった趣向のものが多かったが、今は人間の闇や弱さを歌ったものが増えてきた。
 
 この“闇”感が、ファッションアイテムとして見た時のマスクと非常によくマッチするのである。完全な健康体ではないように見えるのが具合よく、また顔を隠して補正をかけてくれるアイテムとして、若者に重宝がられるようになった。人は、隠れた部分を自分の都合のいいように補って見ようとする性質があるらしいので、マスクをつけていれば美男美女に見られる可能性が高くなる。これは俗に“マスク補正”などと呼ばれている。
 
 そしてご存じの通り、自分の容姿への関心がとりわけ高まるのが思春期である。思春期+ファッションカルチャーの土壌があるから、もはやマスクは受け入れられないはずがない。
 
 韓国発の「KF94」と呼ばれるマスク(厳密には「KF94」は規格名)が国内で人気を博するなどして、いよいよマスク支持は若者世代で盤石のものとなったかに見える。先に挙げた世論調査の結果は、こうした世相を反映してのもの……というのが私見である。
 
 だから、若者世代でマスクは、厚労省の「着用緩和」のお触れ後、自然なファッションアイテムとして定着し、しばらくはポピュラー然として君臨し続けるはずである。無論マスクを嫌う若者もいるので、思春期の若者たちが教室でマスクを巡ってどのようなドラマを繰り広げるかを想像してしまう。
 
 若者間のマスク事情は上記の通りで、一方30~40代より上の世代ではマスクをしない人が徐々に増えていくのではあるまいか。すなわちマスク着用の世代によって二極化が進むだろう。ここで予言した手前、世の中にはぜひその通りに進んでほしいと願ってしまうが、果たして…。