とりわけ移民への関心が高まっているのが、上海だ。日本でも報道されていた通り、上海では新型コロナウイルス感染拡大を背景に3月末からロックダウンが行われている。その期間は2カ月を超えた。

 常住人口約2600万人を有する上海は、世界有数の国際ビジネス都市である。市政府の都市管理水準が中国国内で最も高いといわれており、異文化にも寛容的だ。ゆえに、国内外から多くの人材が集まり、上海は他の都市と比べものにならないくらい急激な成長を遂げてきた。

 コロナ対策においても、当初は中国国内でも「優等生」の都市だった。そんな上海がまさかのロックダウン。筆者も何度か現地の惨状を記事にまとめたが、厳しい規制が敷かれる中、市民の忍耐力は限界にあるといえる。

 今回のロックダウンで、上海というブランドは大きく傷ついた。現在の状況に疲れ果て、将来に不安に感じる上海市民が急増している。

 筆者は日頃、公私ともに上海と密接な関係があるため、ほぼ毎晩遅くまで仕事先の関係者や友人たちから電話で「愚痴を聞く」生活が続いている。皆、口をそろえて、「こういうことが上海で起こっているのがどうしても信じられない。あり得ない」と言う。中には、「海外へ脱出したい」という人も多い。そして、筆者の周りでは、その行き先として「日本」を希望する人が増えている。

移住先として日本の人気が急増?
その理由とは

 筆者の仲の良い友人(40代女性)は2人の子持ちだが、「上の娘を日本に留学させたい」と言ってきたので筆者は驚いた。なぜなら、彼女も彼女の夫もアメリカ国籍の中国人。上海で大きなレストランを経営しており、子どもは将来、アメリカに留学させるのだろうとてっきり思っていたからだ。ところが、彼女は「アメリカは銃社会で怖いし、最近アジア系の人への差別や暴力事件も増えている。一方で、日本は安全で上海にも近い」と言う。

 これまで中国人の中で人気の移住先は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど英語圏の国に加えて、アジアではシンガポールやマレーシアなどだった。日本はもともと移民の国や英語圏ではないので、人気国リストの上位に入っていなかった。

 しかし先日、東京で中国人向けの来日留学や各種ビザ取得のコンサル会社を経営する知人男性、張さん(仮名)から、筆者のもとに上機嫌で連絡があった。「最近、上海を中心に日本へ移住したいとの問い合わせ急増している。昨年に比べて10倍以上に増えた。対応に追われ、うれしい悲鳴だ」という。