自分らしい「思い」から生まれたビジネスは周囲も巻き込む
前田:そして、将来そういう世界にしたいという思いでつくったのがSHOWROOMであるという「Why」の部分も伝えていくと、それが一つの優位性になると思います。そう考えて、矢面に立って発言したり、Whyを語る本を出したりもしました。
平尾:ちょうど起業家でテレビに出ている人がほとんどいなかった時期に、前田さんは先駆者として出ていました。
前田:当時は、自分が誰にも知られていない状態だったから、新しくSHOWROOMを始めるライバーの人たちのほぼ100%が僕を認識していなかったかなと思います。今おそらくSHOWROOMでライブ配信している人は、ほぼ100%僕を認識してくださっていて、我々がなぜSHOWROOMを立ち上げたのかも知っている人が多いです。
そうして次第に、「絆」をベースにしたサービスの設計思想にも気づいてくれたら嬉しい。
毎回、早朝だろうと深夜だろうと、何時に配信しても観に来てくれるファンの皆がいてくれたりすることが、どれだけありがたいか。そんな皆にどう感謝して、思いやりを届けていくか。そういった温かい感謝と応援の連鎖を生み出したくて作っているサービスなので、そこにライバーが気づいてくれたら、ユーザーの行動も温かくなって、日向ぼっこのようなルームがたくさん形成されていく。
平尾:創業者の想いがユーザーの皆さんに届いている。素晴らしいですね。
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。
前田:だと嬉しいです。この記事を読んでくれているライバーがいたら、ここで「ああ、ファンのみんなにありがとうって伝えてみよう」っていう気持ちになってくれたら、僕やSHOWROOM視点では、この記事が世に出た意味がそれだけであります(笑)。こうした定性的な哲学は短期では目に見えなさそうでいて、長期では必ず定量数値に跳ね返ってきていると思っています。会社が打ち出しているメッセージや価値観は、サービスを通じてユーザーの行動と必ずどこかでリンクしてくると思います。
こういうことが「自分らしさ」だと私は思っていますが、ここまで話しておきつつ、すべての起業家に原体験がなければならないとは決して思いません。極論、「儲かりそうだから」始めることでも全く問題ないし、むしろとても良いと思っています。儲けは幸せを生み出している目に見える証左ですから、讃えられるべきであり、原体験だけが取り沙汰されるべきものではない。私はたまたま原体験からリリースを始めたので、「自分らしい」やり方に自然となったかなと思いますし、既存の業界からすると「別のやり方」でもあったので、自分としても燃え上がることができて、何もないところに0から市場を生み出せのかなと思います。
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