「ランドセル至上主義」に
凝り固まった大人たち

 このことからもわかるのは、イノベーションをつぶす人は、科学や合理的思考とかけ離れた「精神主義」に支配されている傾向があるということだ。それは、「さんぽセル」に対して、「防犯ブザーが手元を離れて危ない」「不審者に追いかけられたら逃げにくい」という言葉からもよくわかる。以下は小学生たちの反論だ。

<防犯ブザーをポケットに入れたりネックレスにしたりすればいい。ランドセルを置いて逃げられて身軽だし、今より速く逃げられます>(同上)

 こちらの方が説得力がないだろうか。大人たちの頭の中では、防犯ブザーはランドセルにくっついているものなのだから、いついかなる時もランドセルと運命を共にしなくてはいけないという「ランドセル至上主義」のようになっている。

 逃げるとか叫ぶという子ども個人のアクションより、世界のすべてを「ランドセル」を起点に考えていくのだ。そこには科学もなければ、合理性もない。あるのは「ランドセルは正しい」という信仰だけだ。こうなると、宗教家とちょっと似ている。