イノベーションの芽をつぶす人たちの
3つのロジック

 日本からはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような企業は誕生しないと言われて久しい。

 これは技術力や資金力うんぬん以前に、イノベーションをつぶす人が社会に多いからという意見もある。今回の小学生たちのように、社会課題を解決しようと新しいことを始めた若い才能を「出る杭」として打つだけではなく、そのまま地中深くまで埋めて二度と出てこないようにコンクリートでフタをする。

 そのようにイノベーションの芽をつぶす人たちが、好んで用いる以下のような3つのロジックがある。

(1)自分たちに都合のいいリスクを設定してそれを過度にあおる
(2)古いシステムのメリットを過度に強調する
(3)社会課題をちゃぶ台返しする

 一体どういうことか。実はこれは今回の「さんぽセル」バッシングの中でも確認できるので、ひとつずつ説明していこう。

リスクを過度にあおる
フェアではないやり口

 まず、「(1)リスクを過度にあおる」だ。

 これは特殊な状況を自分で勝手に設定し、その中で一方的にイノベーションの危険性をあおって、「そんなリスキーなことをするよりも今のやり方が一番安全」というという結論に持っていくというもので、イノベーションをつぶす時の代表的なテクニックのひとつだ。

 例えば、「さんぽセル」を批判している人たちは、ランドセルを引きずると交通事故の犠牲になるリスクが高くなるという。曰く、ランドセルというのは、自動車や自転車にはねられたり、坂道を転がり落ちたりした時、クッションになってくれるので安全である。それに対して、「さんぽセル」は引きずっているだけなので、子どもの身を守ってくれない。それどころか、坂道で転がってしまったり、車輪がかかとにぶつかったりして、逆に事故を誘発する恐れがあるというのだ。

 車にはね飛ばされた児童のランドセルがクッションになって命が助かったことがあるというのは事実だ。しかし、それは、はねられた場所や、飛ばされた向きなどのいくつもの幸運が重なったもので、ランドセルを背負っていても、それがクッションになることなく怪我を負ったり命を失った子どもの方が圧倒的に多い。珍しいケースだからこそニュースとして報じられている。特殊ケースを一般的なケースにすり替えて論じるのはフェアではない。