オンライン研修ではなく、対面研修ならではの利点
続いてのパートは、「経験学習」。当日に配布された研修テキスト*5 に掲載された漫画(架空の企業を舞台にしたストーリー仕立てのもの)を読み、社会人として成長するために必要だと感じた部分を各グループで抜き出していく。グループの発表後、「成長するためには、経験だけで終わらず、仕事を振り返って教訓にすることが必要です」と、鈴木講師。経験→内省→教訓→適用の「経験学習サイクル」や、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を繰り返す「PDCAサイクル」を、新入社員が内定期間中に学んだテキスト(FC)から引用し、鈴木講師が解説していく。また、各企業の人事担当者と内定者(現・新入社員)が交わした「コミュニケーション・ペーパー*6 」から、「学生生活の振り返り」のパートを受講者間でフィードバックした。研修当日の学びがこうしてスムーズに進んでいくのは、受講者である新入社員たちが内定期間中にテキスト(FC)をしっかり読み込んでいるからだと分かった。
*5 「フレッシャーズ・コース2022」の内容も一部転載された、当研修オリジナルのもの。
*6 「内定者の一人ひとりを大切にフォローするには、人事担当者と内定者との定期的なコミュニケーションが効果的です。フレッシャーズ・コースには巻ごとのテーマに即した課題が書かれたコミュニケーション・ペーパーが付録として付いています。コミュニケーション・ペーパーをやり取りすることによって、内定期間中のコミュニケーションがスムーズに図れます」(「フレッシャーズ・コース」のコミュニケーション・ペーパーの説明より)
「経験学習」のパートから、「コミュニケーション」のパートへ。ここで学ぶのは、社会人としての基本といえる「報告」「連絡」「相談」、いわゆる「ホウレンソウ」だ。鈴木講師が上司役となって、受講者である新入社員は「指示の受け方」のロールプレイをすることに。上司に呼ばれたら、(1)返事をして、メモを持って席を立つ (2)指示者(=上司)の顔が見える位置に立ち、声をかける (3)メモをとりながら聞く (4)指示を受け終わったら、復唱確認して、不明点を質問する (5)他の仕事との優先順位を確認する (6)挨拶して、席に戻る――を行うかたちだ。
全員の見本となるロールプレイのモデル役を鈴木講師が募ると、それまではあまり積極的に見えなかった新入社員が手を挙げた。やがて、ロールプレイを終え、オブザーバーの受講者たちから、「納期についてなど、細かいところを確認したのはよかった」「もっと返事をハキハキしたほうがいい」といった率直な感想やアドバイスが発せられていく。研修の最初に学習した「語先後礼」の再確認をはじめ、鈴木講師からは「『他にご用はありませんか?』がマジックワードですよ」といった貴重なアドバイスがなされていく。最初は緊張してうまくできなかったモデル役がリトライする際には、同グループのメンバーがサポートする場面もあり、短い時間のうちに築かれたチームワークをうかがい知れた。その後も、同じシチュエーションのロールプレイを各グループ内で行い、新入社員たちは「ホウレンソウ」の正しいあり方を覚えていった。
研修のプログラムは円滑に進み、「基本の確認」として“理解度テスト”が行われた。「テストの結果よりも、悩んだ問題や答えがあやふやだった問題に注目してください」と、鈴木講師が説明する。そして、「実際の仕事の現場では、メモを取らず、椅子を戻さない社員もいるかもしれません。その時、皆さんはどうしますか? 何のための行動か目的を自分で考え、まずは基本を実践していくことが大切です」というメッセージで、午前午後におよぶ約6時間半の研修初日が終了した。
改めて、鈴木講師に、この日の研修を振り返ってもらった。
「最初は皆さんとても控えめでしたが、積極的に発言し、周りを引っ張る受講者が増え、そうした人の影響もあって、ほとんどの人が研修に積極的になりました。オンラインに慣れている世代の新入社員たちですが、対面であることがとてもプラスに働いたと思います。たとえば、私への報告が必要な場面では、他のグループの様子をちらりと見て気づく人も多かったようです。これはオンラインでは成し得ないことでしょう。講師の私も、受講者一人ひとりに近づいて、ちょっとした声がけをすることもできたりと、対面研修ならではの良さがたくさんありました」(鈴木講師)