23卒採用の選考で、経営者や人事担当者がハマりがちな落とし穴

2023年3月卒業予定者(以下、23卒生)をメインにした、企業における採用選考が進んでいる。すでに同時期の就職内定(内々定)率が前年を上回っているという民間調査のデータもあるが、これから6月頃までが採用選考のピークで、対面やオンラインによる最終面接が行われていくだろう。そうした一連の採用活動の過程で、企業の経営者や人事担当者がハマりがちな落とし穴は何か? 多業種の企業と深くかかわり、インターンシップのプロデュースをはじめ、人材採用から育成までのコンサルティングを手がけている福重敦士さん(株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局・局長)に話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

オンライン時代に面接担当者に求められるスキル

 コロナ禍も3年目に入り、昨年2021年9月末で緊急事態宣言がいったん解除されたものの、今年2022年にはオミクロン変異ウイルスが感染拡大し、まん延防止等重点措置が東京都などに適用された。23卒生を主な対象とした企業の採用活動は、いままさにピークだが、コロナ禍における採用活動はどう推移しているのだろう。

福重 コロナ禍が始まった2020年の採用活動(21卒生の採用活動)では、企業側も学生側も「カメラの使い方が分からない」「オンラインツールの利用がうまくできない」といったトラブルが続出しました。しかし、コロナ禍3年目の現在では、そうした戸惑いは少なくなったようです。今年、23卒生の採用活動においては、オミクロン株の感染拡大もあって、オンラインをメインにしつつ、リアルを一部併用するというスタイルが一般的になっています。

 実は、インターンシップにしろ、面接にしろ、これだけオンラインが当たり前になったにもかかわらず、当社の調査 においては、会社説明会への就活生の参加数や平均エントリー社数は対面が中心だったコロナ前とあまり変わっていません。オンラインになれば移動時間などもなく、リアルよりも多くの会社説明会に参加し、エントリーするように思いますが、実は、学生が「検討する社数」はそれほど増えていないのです。テクノロジーの進化とともに情報が集めやすくなった一方で、学生の視野が狭くなっている可能性もあります。そもそも、ネットにおいて、検索ワードにひっかからない企業は学生の「視界」には入ってきません。BtoCの有名企業にはたくさんの学生が集まりますが、優良でありながら知名度の低いBtoB企業には学生が気づかなかったりします。リアルで行われる合同会社説明会で成し得た、就活生と企業の“偶然の出会い”が減っているのです。

* ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2022年卒版 採用・就職活動の総括」

 そうしたなか、夏にかけて本格化していく採用活動での面接にあたり、企業経営者や人事担当者が注意すべきことは何か?

福重 オンラインに慣れた学生が「対面(リアル)での対応には戸惑いがち」ということです。コロナ禍以前の学生に比べ、企業側が思っている以上に、23卒生は対面に慣れていません。私も多くの学生に接していますが……口下手になっているというか、対面でのコミュニケーションに慣れていない学生が多い印象です。まず、人事担当者はそのことを理解しておいたほうがよいでしょう。

 直接に学生と接する担当者(面接官)も、従来以上に学生の話を引き出し、学生の良さを見つけるように意識するべきです。就活における面接は学生にとっては特別な状況であり、学生自身は、「質問されたことに答えること」が基本だと考えています。その結果で起こりがちな「一問一答」の雰囲気では、学生の本音や気質を企業側が読むことは難しいでしょう。優秀な担当者(面接官)は「一問一答」ではなく、学生と「会話する」のが上手です。初対面であっても相手の気持ちをほぐし、その学生の人となりやポテンシャルを見極めるスキルを持っています。

 採用のための面接官が、面接後にレポート(評価シートなど)を作成し、人事部の採用担当者に提出する企業も多い。定量的な評価である、態度・話し方などの「5段階採点」に加え、学生の話の内容については、具体的な記述で評価することもあるようだ。そして、その記述に頭を悩ませる面接官も多く、面接官自身の力量が問われていく。

福重 「親ガチャ」ならぬ「面接官ガチャ」があるというのが私の持論ですが、採用面接のオンライン化によって、面接官の良し悪しが顕著になっています。

 オンライン面接では、定刻になったら学生が指定された画面(URL)に入ってきて、そのまま面接がスタートします。そして、担当者(面接官)が質問を始め、学生がそれに答えていくスタイルが一般的で、結果的に、学生の本音が読めないまま終わります。

 一方、リアル対面における面接では、面接室の隣に待合室などがあって、待機中の学生に人事担当者が声を掛けたりします。それが、学生にとって、気持ちをほぐすような「アイスブレイク」になったりします。ですから、オンライン面接では、担当者(面接官)が学生の気持ちを和らげるスキルを持っておくことが重要になります。企業側からすれば、学生が本音で話しやすくなる雰囲気をつくり、その本音を知ることで、自社に合った学生を見つけることができるのです。

 たとえば、面接が午後2時からであれば、1時55分に画面(URL)に入ってもらい、人事担当者が学生と軽く雑談するのもありでしょう。終わった後も、1、2分、「面接はどうでした? 今日は、これからどうするのですか?」などと軽く話しかけると学生の違った面が見えたりします。

 また、企業側のマンパワーの問題はありますが、複数の担当者が面接し、1人が質問役でもう1人が口をときどき挟むといった方式にするのも効果的です。

23卒採用の選考で、経営者や人事担当者がハマりがちな落とし穴

福重敦士 Atsushi FUKUSHIGE

株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース
HD首都圏営業局 局長

2004年、株式会社ダイヤモンド・ビッグアンドリード社入社(現株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース)。大阪支社勤務を経て、2018年から首都圏営業局に在籍。メーカー・商社・金融・マスコミ・コンサルなど、大手有名企業と多数かかわり、インターンシップのプロデュースをはじめ、人材採用から育成までのコンサルティングを手がけている。