受動的ではなく、能動的な姿勢が見られ始めた

 当研修「『フレッシャーズ・コース2022』を活用した自律型新入社員研修」の目的は、「内定期間中に学習したテキスト(FC)をもとに、各企業における入社後に必要なマインドとマナーを身につける」こと。そのための研修目標として、「社会人と学生の違いを説明できるようになる」「ビジネスパーソンとして好ましくない言動を見て、改善点を指摘できるようになる」「ロールプレイで、感じの良い基本動作を実践できるようになる」の3点が設定されていた。受講者である24名の新入社員たちは、この3つの目標を2日間の研修プログラムを通じて達成していくわけだ。

「マインドとマナー」のうち、1日目は、「マインド」が学習テーマとなり、最初に「学生と社会人の違い」について考えるワークがあった。5分間の個人ワークの後、それぞれのメンバーが意見を出しながらグループごとに「学生と社会人の違い」を模造紙に書き出していく。鈴木講師からは、ワーク全体の時間内に、各グループそれぞれに10分間の休憩をとることもミッションとして伝えられた。研修のタイムスケジュールとして“全員一緒の休憩時間”があるのではなく、細かなタイムマネジメントを自分たちで行うことも「自律型研修」ならでは、だ。

 受講者たちが、「学生と社会人の違い」を一枚の模造紙にまとめ終えたところで、鈴木講師に「終わりました」と報告したグループと、報告を行わなかったグループがあった。鈴木講師は、報告のなかったグループに対して、「業務は報告して初めて終了になるのです」と教えた。

 グループワーク後は各グループの発表タイムへ。しかし、発表時間がどれくらいなのかが誰にも分からない。鈴木講師があえて伝えていなかったのだ。「指示を待つだけではなく、分からないことは自分から聞き出さなくてはいけません」という鈴木講師の言葉に、一同がハッとした表情を浮かべる。研修後の取材で、発表の制限時間を教えなかった意図を鈴木講師が詳しく語ってくれた。

「自律型の研修では、私は『少し不親切(な姿勢)』を意識しています。自分で気づいて行動することと、言われたとおりにやることでは、学びの深さが違います。『あえて言わない』ことも多いですね。その代わり、自ら気づくことができたときは、たくさん褒めるようにしています。その様子を見て、他のグループも意識するようになります。自らの気づきと他者の行いで気づくこと――その両方が大切です」(鈴木講師)

 各グループの発表も、やりっぱなしや聞きっぱなしといった受動的なものではない。発表グループの発表者は、鈴木講師が指名するグループ外メンバーからの質問や意見を次々と受けていく。自分自身の頭で考え、気づきを増やしていくトレーニングだろう。返答に困った人を、同じグループのメンバーが代わりに答えて助ける姿勢もあった。発表とディスカッションを1時間ほど重ね、新入社員たちが能動的な姿勢に変わったように私には見えた。

 そうして、褒めるところは褒め、改善点ははっきり伝えるという鈴木講師の指導が受講者たちに響いたようで、指示待ちの姿勢が減り、分からないことを質問する場面も増えていった。