片づけの中でも最難関の「紙の片づけ」。「今すぐ必要な紙が肝心なときに見つからない!」「支払いや振り込みの期限が過ぎて大失敗した!」「大事な紙をなくして信頼を失った!」など紙や書類の整理ができないために起こる悲劇も数え上げればキリがない。しかし、どうすれば紙が片づくのかわからない。そんな永遠の悩みをズバリ解決する唯一の本が石阪京子さんの『人生が変わる紙片づけ!』だ。本書には、必要な紙が5秒で取り出せる紙片づけ術の豊富なメソッドと、紙一枚で大惨事を招いた人たちのエピソードがたくさん出てくる。他人事ではないと思う人もきっと多いはずだ。そこで、本の発売を記念して石阪さんにインタビューした内容を4回に分けてお届けする。第4回目は、紙片づけで人生が変わる理由について聞いた。(取材・構成/樺山美夏)
紙片づけ講座を受けて涙する人たち
―― 書類の片づけ講座では、石阪さんの話を聞いて泣き出す人がいるそうですね。片づけができないことでそれほど思い悩んでいるのでしょうか?
石阪京子(以下、石阪):みなさんやっぱり、理想の暮らしや生き方がありますよね。でも暮らしが滞っていることでうまくいかない。人生は砂時計と同じでカウントダウンが迫っているわけですから、「人生の時間には限りがあることに早く気づきましょう」という話をするんです。そして、「そろそろ自分と向き合って、金銭的な失敗や無駄遣いをなくすために散らかった紙の整理をしましょう」と言うと、やるべきことが見えてきたと思われるようで涙される方がいらっしゃいます。
これまでの辛かったことや、片づけができなかったことで自分を責めている方も多いです。
「このやり方でやれば理想の暮らしは手に入りますよ。強い気持ちですすんでいきましょう。やり方を知らなかっただけなので、ご自分を責めないで」とお伝えします。生活を変えたいと思って自分から本を読んだり、セミナーにきて行動に移す真面目な皆さんが損をしないように、全力で応援したいと思っています。
―― 『人生が変わる紙片づけ!』の内容からも、その様子が少し伝わってきました。
石阪:みなさん家族思いで、モノや紙にも思い入れがあるからなかなか手放せないんです。でも片づけができないと、大事な紙が見つからなかったり失敗も増えるので、遠慮して言いたいことも言えず自分を抑えてしまう。それが続くと自己嫌悪に陥ってしまう。
するとますます落ち込んで、そのネガティブな気持ちが怒りに変わっていくこともあります。怒りを抱えるようになると人が離れていきます。家族も近寄らなくなるし、職場の人や学校の先生も距離を置くようになります。
逆に片づけをして自信を取り戻すと、家族や身近な人と堂々とコミュニケーションできるようになって信頼関係も深まります。子どもたちは、自分のことは自分でできるようになり、笑顔も増えて、旦那さんから「実は俺、保険のことわからへんかったから、調べてくれて助かった」と御礼を言われたり。
でもそこまで到達するには、片づけをする前に心の整理が必要です。だから私は最初、みなさんの理想の暮らしをお聞きして、自分にとって本当に大切なものは何か考えていただくんです。そうすると、家族と過ごす時間が大切という方もいますし、自分がやりたいことをしたいという方もいらっしゃいます。
その理想の暮らしを手に入れるために、まずは片づけをして土台づくりをしましょうという話をします。そうやってモチベーションを上げてもらわないと、「やっぱり散らかっていてもいいや」ってなっちゃう。あきらめるのは簡単なんですよ。忙しさのせいにしたり、誰かのせいにしたり、「実家も散らかってたし」と遺伝のせいにする人もいますから。
紙片づけで人生を見直して転職する人も
―― あきらめずに紙の片づけをした人には、どのような変化が見られるんですか?
石阪:紙を片づけると本当に必要なものだけ残るので、お金回りのこともしっかり把握できます。紙はモノよりも、お金など人生に関わることに直結していることが多いですからね。そうすると、不安から余計なことに手を出したり騙されたりしなくなる。自分の人生を自分でコントロールできるようになるんですね。収支と家庭の経営状況も理解できて無駄遣いも減るので、無理して頑張って働いていた仕事を辞めて転職される方も結構います。紙片づけをされて、「自分に必要なお金がいくらあればいいかわかったから、もうやりたくない仕事はやらない」とおっしゃった方もいました。
冷蔵庫に入りきらないほど食べものを詰め込んでいる人がいますが、紙を片づけないと人生もそれと同じ状況になります。要るモノと要らないモノの区別ができなくなると思考停止状態になって、不要なものをどんどん溜め込んでしまうんですね。そうすると本当に必要な紙がわからなくなって、人生の大惨事を招いてしまうこともありますから。
―― 娘さんと約束した嵐のコンサートのチケット代を振り込み忘れて、一生責められることになったお母さんの話には胸が痛みました。振り込み用紙を冷蔵庫に貼っていたそうですが、冷蔵庫回りは紙のオブジェになって見慣れてしまうから意識しなくなるんですね。石阪さんの言葉にヒヤッとしました。
石阪: 他にも免許更新のハガキをなくしたり、入学金の振り込みを忘れたり、びっくりするような紙の失敗っていっぱいあります。でも慣れって怖くて、汚れていても散らかっていても、いったん慣れてしまうとそれが普通になっていくんですね。ですから『紙片づけ』に書いた片づけのメソッドやロジックも大事ですけど、やっぱりなぜ片づけたいのか、どういう暮らしがしたいのかを考えて、片づけを絶対にあきらめないような強い動機が必要なんです。