半導体の受託製造世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏は4月に異例のインタビューに応じた。同氏は、米半導体企業が業界のリーダーになることを期待して500億ドル(約6兆7500億円)の助成金を提供するという米議会で現在審議中の取り組みは「非常に多額の費用がかかる無駄な行為」だと考えている。米企業がTSMCを追い抜く可能性は小さいという同氏の考えは正しいかもしれないが、問題はそこではない。重要なのは、先進的な半導体の製造を全面的に台湾に依存すれば、米国の国家安全保障が危険にさらされるということだ。TSMCは、全てのスマートフォン、ノートパソコン、弾道ミサイルに必要な先進的な半導体の92%を製造している。エヌビディア、クアルコム、アップルなど米企業は製造のほぼ全てを台湾に依存している。仮に台湾の半導体製造能力が失われたり、中国の手に落ちたりすれば、米国のハイテク部門は壊滅的な打撃を受けるだろう。ロバート・ワーク元国防副長官が警告したように、台湾海峡で紛争が勃発すれば、半導体をめぐる国家安全保障上の危機が起きる可能性がある。ワーク氏は「われわれはあと110マイル(177キロメートル)で、2世代先から、もしかすると2世代前に後退するかもしれない」と述べた。これは台北から中国本土までの距離だ。
【寄稿】安全保障を脅かす半導体の国外依存
イノベーション・競争法は中国の支配を阻む第一歩にすぎない
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