いま「学習する組織」に必要なのは個人の実践

 さらに福谷氏は「『学習する組織』になるにはHome(チーム)から始めよ」とするセンゲ氏の提言を紹介し、これを企業で実践するにはどうすべきかを、2人に投げかけた。答えたのは井上氏だ。

テクノロジーの進化は組織の進化に影響するか。カギとなるのは「リレーショナル・フィールド」『スタンフォード・ソーシャル イノベーション・レビュー 日本版』 共同発起人
井上英之

「気候変動にしても、意図して環境を壊そうとしている人間、気候変動が進んでしめしめと思っている人間はいないはずです。でも何となく『まあいいか』とゴミを捨ててしまいます。そのように『目の前のアクション』と『意図する未来』には常に食い違いがあります。しかし、その積み重ねが組織的な問題や社会的な問題を引き起こしています」

 そのことから井上氏は、日頃の活動で学生や企業向けに推奨している「マイプロジェクト」というフレームワーク(学習者一人ひとりが「私のプロジェクト」をつくり実施することを通じて学ぶ、自己発見を起点とした方法論)を紹介し、個々人が自発的に学習する組織の実践には、失敗を共有できる空間が重要だと説いた。

 福谷氏もそれに応じ、「進化し続ける組織の条件」についてこうまとめた。

「私たちは目の前にさまざまな課題を抱え、そのことに反応してしまいます。しかも多くの場合は『このままではまずい』という恐怖感に突き動かされてしまう。進化し続ける組織をつくっていくには、人間が生まれながらに得意としている『ビジョン』と『プラクティス』が重要だと思います」

 さらに、子どもたちの幸せや社会の幸せを願い、その実現に向けて何かをやってみること、そして、うまくいかないことがあってもそれを振り返る「学習する組織」であることこそが、変化に対応し進化する組織へと変革するカギだとして、特別鼎談を締めくくった。