物価高が進み、お金の価値がどんどん低くなっています。せっかく老後のためにためた現金もこの先どれだけ価値があるのか、不透明です。このような不安定な社会情勢ゆえに、現金以外の方法で資産を維持し作っていくことが求められています。時代の転換期の今、改めて身に付けなくてはいけない資産形成の知識と方法を解説します。(社会保険労務士 井戸美枝)
「物価が上がる」=「現金の価値が下がる」
この数カ月で、物価がじわじわと上昇しています。
総務省が5月20日に発表した4月の「消費者物価指数(CPI、2020年を100とする)」によると、生鮮食品を除く総合指数が、前年同月比2.1%上昇しました。資源高で電気代やガソリン価格が大きく上昇していますし、原材料高で食料品の価格も上がっています。
物価が上がるということは、裏を返せば、お金の価値が下がるということ。この先、物価が上がり続けるかどうかはわかりませんが、低金利のまま物価上昇が続けば、現金の資産は目減りしていきます。
保有する資産のうち、現金の割合が高い人、とりわけ、貯金を取り崩しながら暮らしている高齢者にとって、厳しい環境変化といえるでしょう。
年金は、物価や賃金に連動するため、インフレに耐性があります。ただ、「マクロ経済スライド」といって、物価・賃金の上昇率よりも、年金支給額の上昇率が低く抑えられる仕組みがあります。また、10月から、年収が200万円以上ある後期高齢者は、医療費の自己負担が2割に引き上げられます。今後、少子高齢化がすすむ中、年齢問わず、相応の社会保険料の負担が求められていく傾向にあるのです。
つまり、退職後の生活を見据えて、現金以外の資産も保有しておく――そう考えるべき段階に入ったといえます。現に国は、先を見越して、既に動き出しています。
しかし、生活スタイルや資産形成法が確立している中高年層には、これまで通りで逃げ切りたいと考えてしまう人もいるでしょう。自ら正しい情報を得ようとしない限り、行動できず、経済的な懸念が残ったままになります。今回は、そんな不安を払拭するために、インフレ時代に備えるべきことを解説します。