「戦場の霧」という言葉があるように、世界では戦争中に飛び交うニュースというのは、さまざまな政治的思惑がのっけられたプロパガンダだということが常識だ。それは今回のウクライナ戦争も然り。この4カ月を振り返ってみると、うさんくさいニュースが山ほどあった。それを総ざらいして、なぜあんな眉唾な話に乗っかってしまったのかということをしっかり自己検証すれば、「マスゴミ」などと何かと批判されることの多いみなさんの株もグーンと上がるのではないか。

この4カ月の間にどんなプロパガンダが流れていたか

 では、どんなニュースをマスコミが総ざらいすれば、いいだろうか。

 例えばわかりやすいのは、侵攻直後に耳にタコができるほど報じられ、今も盛んに叫ばれている「ロシアは国際社会で孤立してもうおしまいだ!」という方向のニュースなんてどうだろう。実際、こんなニュース記事もあった。

●国連非難決議 ロシアの孤立が明白になった(読売新聞3月4日)
●結束強めれば孤立も ロシアと国際社会の間で揺れ動く中国の苦悩(毎日新聞3月11日)

 このニュースを真に受けたピュアな日本国民は狂喜乱舞した。ロシアは国際社会から追放され、ズブズブの関係だった中国も距離を置き始めている。あとは、ロシア国民が「洗脳」から目覚めて、プーチンの首を取ってくれれば世界に平和が訪れる――。

 だが、残念ながら、これは典型的な戦争プロパガンダだ。西側諸国と西側にくっついた日本の立場的に「こうだったらうれしいな」という願望が多分に盛り込まれた、かなりバイアスのかかった偏向報道なのだ。

 それがうかえるのが、6月15日から18日にかけて、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された、第25回サンクトペテルブルク国際経済フォーラムである。

 これは例年140カ国ほどの国が参加しているが、今年は欧米諸国の政府要人は軒並み欠席しており、米国政府などは他国にボイコットを呼びかけている。今やロシアは世界中の人々から批判される「悪の帝国」であり、国際社会で孤立無縁の状態なのだから当然だと思われるだろうが、なんと今年も127カ国が出席した。

 また、その最中にプーチン大統領は今のG7(イギリス、アメリカ、フランス、イタリア、カナダ、日本、ドイツ)を中心とした古い世界秩序は崩壊寸前だと主張し、新興国と発展途上国同士の連携を呼びかけている。ロシアが唱えている「新しいG8」(中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン)のことを指しているのは明らかであり、そのスピーチの場では盟友・習近平氏のビデオメッセージが公開されていた。

 ちなみに6月28日、ロシアが入っているBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の枠組みにイランが正式に加盟を申請した。また、ロシア外務省によれば、アルゼンチンも加盟を申請しているという。

 3カ月前、マスコミが「国際社会で孤立している」と報じていたロシアに、なぜ127もの国が集っているのか。なぜイランやアルゼンチンのように経済的連携を強化しようという国まで現れているのか。ここにきて何かロシアの国際的なイメージが急速にアップするようなことがあったのか――。

 いや、そんなイメージアップもダウンもない。そもそも3月から実は国際社会でのロシアの評価はこんなものなのだ。

 つまり、あの当時、マスコミが大騒ぎしていた「国際社会で孤立」や「中国とギクシャク」という話の方がインチキで、アメリカやEUの視点に基づいた「こうなったらいいのに」という願望を多分に含んだ戦争プロパガンダだったのだ。