社員による相場操縦行為という前代未聞の不祥事を起こし、前副社長らが逮捕、起訴されたSMBC日興証券。弁護士らの調査委員会の報告書が6月24日に公表され、コンプライアンス不全の社内文化の一因として、三井住友銀行出身の元幹部を事実上名指しする記述があった。近藤雄一郎社長は引責辞任を否定するが、後継者を再び銀行から送り込むことが、果たして許されるのか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
コンプラ脆弱さ「異常で看過できない」
社長は引責辞任を否定、銀行の責任は
「銀行からの圧力や忖度は存在しません」――。SMBC日興証券で前副社長ら6人が相場操縦の罪で逮捕、起訴された事件で、同社は6月24日、自ら設けた調査委員会の報告書を公表し、首脳陣が記者会見を開いた。
この会見の席上、一連の問題を受けて社内で3月に設置された内部管理体制を見直すプロジェクトチームの担当役員を務める野津和博専務執行役員が強調したのが、冒頭の言葉である。
顧客が大株主となっている企業の株式を時間外で買い取り、個人顧客に転売する「ブロックオファー取引」の際、その価格の算出基準となる市場での終値を維持するため、日興が自社のポジションで注文を出して買い支えていた今回の問題。
東京地検特捜部などはこれを、金融商品取引法で禁じられた相場操縦に当たるとして強制捜査に踏み切った。日興の調査委員会もまた、これらの個別の取引やその背景を検証。社内の規範意識の乏しさ、コンプライアンス体制の脆弱(ぜいじゃく)さなどを挙げて「異常な状況で、看過できない」と厳しく批判した。
日興を事実上支配する三井住友銀行(SMBC)出身ではなく日興生え抜きの近藤雄一郎社長は会見で、自身の関与と、現時点での引責辞任の考えを否定し、続投への意欲をにじませた。
とはいえ、法人としての日興も起訴された上、金融庁は一部業務停止を含む厳しい処分を科すとの見方がある。近藤社長はたとえ自身の関与がなくても、辞任が避けられない事態が想定される。
一方で、今回逮捕・起訴された前副社長はSMBC出身だ。さらに、内部管理体制の脆弱さを生み出した要因として、個人名が事実上特定される形でSMBC出身の元幹部を挙げる注記も報告書にわざわざ記された。
近藤氏の進退が危ぶまれる半面、SMBCの責任も問われる混沌(こんとん)とした状態は、今後どこへ向かうのだろうか。