金融DX大戦#8Photo by Yoshihisa Wada

三菱UFJフィナンシャル・グループが、デジタル技術の習熟度などを人事評価の対象にしたことが分かった。デジタルサービス事業本部長の大澤正和執行役常務が明らかにした。デジタルに対する銀行員らの意識や働き方を変え、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる狙いだ。特集『金融DX大戦』(全22回)の#8で、その詳細をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「金融デジタルプラットフォーマー」へ
来年度中に700人規模のコア人材育成

――三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は亀澤宏規社長の就任以来、DXを強く打ち出し、関連投資も数多く行っています。社員の意識変革を含めて、本当に変わったという手応えはお持ちでしょうか。

 亀澤は2016年から、私は17年から、二人三脚と言うとおこがましいですが、デジタル関連のことを一緒にやらせていただいています。

 亀澤はとにかく全社をマインドセットし、変えていこうという意識が強い。それを言い続けて方針もぶれないので、私もすごくやりやすい。「今年はこれをやった」「来年はあれをやろう」と連綿と進められたのは、非常に良かったと思います。

 この何年かの間、各事業本部がやいのやいの言われなくても自立的に考え始めるように変わってきました。その変化を亀澤はつぶさに見ているし、追い掛けている。それをけん引できる人物を事業本部の長に据えている。そういう意味での考え方は本当に一貫していると思います。

――ただ亀澤さんや大澤さんが旗を振っても、全行員は本当に腹落ちしているのでしょうか。「DX?何それ?」と内心思っている銀行員も多いのではないでしょうか。

20年4月、MUFGの社長に就任した亀澤氏は、大手銀行で初の理系出身トップとして話題を呼んだ。16年にはグループCDO(最高デジタル責任者)を務めており、社長就任時のインタビューでは「今後デジタル化は、一気に聖域なく進む。もう一度全ての戦略を見渡して変化を加速させる」と語っている(連載『銀行の近未来』『三菱UFJ新社長が語る勝算、リスク量9兆円減と利益反転を両立』参照)。

一方、大澤氏は17年にデジタル企画部部長に就任。亀澤氏と「二人三脚」でデジタル化の推進役を担い続けた。だが、連結で13万人超の巨大銀行グループの末端にまで意識変革は本当に浸透しているのか――。

それを問うと、大澤氏はDXに力点を置いた人事考課に変更し、さらに700人規模の「デジタルコア人材」を育成する方針を明らかにした。そして「金融デジタルプラットフォーマー」への具体的な道筋について語り始めた。