新しい日本のものづくりを発信するハブを彩る
西陣織の新しいアートピース

 東京ミッドタウン八重洲のコンセプトは、「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド~日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街~」。

 八重洲を舞台に、日本発の文化やビジョンを世界へと発信していく施設です。

 工芸の伝統をくみ、新しい日本のものづくりを発信するハブとなるそんな場所に、象徴となる細尾のアートピースが導入されます。

 オフィスビルから商業施設へ入るエントランスゲートに、細尾が独自開発した新素材「NISHIJIN Reflected」が使用されます。

 高さは一〇メートル、幅は八メートルとなる巨大なゲートを、西陣織のアートピースが飾ることになります。

 西陣織+FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)による画期的な新素材をブロック状にして、ゲートを組んでいきます。

 本連載では、西陣織を建築の外壁素材として使用できるようにするまでの、開発のエピソードをご紹介しました。今回のプロジェクトでも、外壁とはまた違った形で、西陣織が新しい建築を彩ることになります。

 今回の「NISHIJIN Reflected」は、FRPの「クラック(ひび割れ)」を活用したアートピースになっています。通常FRPの世界では、クラックは割れてしまっている状態ですから、「失敗」だとみなされます。

 しかし今回のゲートでは、そのクラックを西陣織の背後に潜ませ、後ろからLEDパネルで光を当てます。それによって西陣織の表面に立体的な陰影が浮かび上がる、かつてなく幻想的なテクスチャーを実現しました。

 ぜひ、その目で実際に確かめていただければと思います。

細尾真孝(Masataka Hosoo)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。