山形新幹線はさらに進化
将来には壮大な計画も

 山形新幹線の進化はなお続く。2024年春に最高速度時速300キロの新型車両E8系の導入が予定されている。これは東北新幹線の最高速度が、92年の時速240キロから、97年に時速275キロ、2011年に時速300キロ、14年に時速320キロと段階的にスピードアップしており、さらに2030年頃をめどに時速360キロまで引き上げられる計画があるからだ。

 東北新幹線大宮~宇都宮間は市街地を走行するため最高速度が時速275キロに制限されているため、山形新幹線が時速300キロ運転を行っても時間短縮効果はわずかだ。しかし時速360キロの列車が行き交う中で、時速275キロ運転のままではダイヤ設定上の制約になりかねない。そこで山形新幹線も高速化することになったのである。

 もう一つ、山形新幹線のウイークポイントが福島駅の構造だ。山形新幹線と線路がつながっているのが下りの14番線ホームだけで、上り列車は下り線路を平面交差して14番線ホームに入らねばならない。交差中は当然、列車が走行できなくなるため、これもダイヤ上の制約になる。

 豪雪地帯を走る山形新幹線はしばしば雪による遅延が発生しており、これが東北新幹線へと波及し、さらに東京~大宮間を共用する上越・北陸新幹線にも影響を与えることがある。そこで福島駅の上りホームにも山形新幹線と接続するアプローチ線を新設することで、この問題を解消しようというものだ。完成は2026年度を予定している。

 さらに壮大な計画もある。福島と山形の県境に位置する板谷峠に新たな長大トンネルを建設しようという構想だ。

 現在、奥羽本線の恵庭~関根間は複数のトンネルが連続しており、最大33パーミル(1000メートル進むと33メートル高さが変わる)の急勾配や急曲線があり、速度制限も厳しい。そこでこの区間を約23キロの「新板谷トンネル」で一気に貫き、雪などの影響を受けにくくするとともに、新幹線規格で建設することで時速200キロ以上での走行を可能とする構想だ。

 新幹線の定義を避けて実現した山形新幹線で、新たに時速200キロ以上の運転が行われるとなれば、その区間だけが法律に基づく新幹線として扱われるのか、あるいは特別な認可を得るのか、時速190キロ程度に抑えて解決するのか、興味深い所である。いずれにせよ実現するとしても完成は2040年代以降になるだろう。

 限られたリソースをうまく活用して新幹線に新境地を切り開いた山形新幹線は、さらなるアップデートが重ねられていくことになりそうだ。