壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

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料理くらい、自分で

団塊の世代における夫婦の年齢差は、初婚時でおよそ2~3歳。順当に考えれば、多くの家庭で先に夫が要介護状態となり、妻が介護をして夫を看取り、その後、残された妻が一人で生きていく可能性が高いです。ただし、中には妻が大病を抱え、先に亡くなってしまう場合もあるでしょう。あるいは妻が亡くならないまでも、入院したり、寝たきりになったりする可能性もあります。その状態が長期化すれば、当然、家事のすべてを夫が引き受けなければなりません。子どもと同居している場合は、ある程度分担できるかもしれませんが、それほど都合よくいかない場合も多いはずです。

そうなると大きな問題となるのが、食事です。数日であれば、コンビニ弁当や外食、デリバリーでなんとかなっても、長期にわたれば経済的な負担も大きくなりますし、そもそも健康的とはいえません。そう考えると、これといって料理をしていない男性は、今からでも料理を習得するべきです。自炊ができれば、節約と健康維持にも役立ちます。

あくまでも低姿勢で

まずは、奥さんに低姿勢でキッチンを使わせてもらう交渉から始めましょう。キッチンは、奥さんの使い勝手が良い仕様になっているはずです。形から入る男は多いので、包丁やまな板を買い替えたりするところから始めがちですが、いきなり配置や道具に手を入れたらトラブルを招くのは必至です。

そうではなく、「これから先を考えて、オレも料理を身につけておきたいから、キッチンを使わせてほしい」「料理を教えてほしい」などと低姿勢で切り出してみましょう。もしかしたら奥さんは、煙たそうな反応を示すかもしれません。

週1回でも料理してみよう

「どうせ洗い物はほったらかしなんでしょ」「あなたが使うと散らかるからイヤ」などといわれることもあるでしょう。ここで間違っても「オレが建てた家なんだから、キッチンを好きに使って何が悪い」などと反論しないでください。反対に三行半を突きつけられるのがオチです。まずは実績を上げながら、信頼を勝ち取っていくのが一番です。これは会社勤めをしていたときと同じことです。

「これからは洗い物を手伝うよ」「買い物があるならオレが行ってくる」などと提案しながら、奥さんの負担軽減を試みます。ある程度、実績を積み重ねて認めてもらったうえで、週に一度でも料理をする機会を獲得しましょう。最初はインスタントの袋麺にネギを刻んで入れるだけでもいいです。そこから料理の腕を上げて、いずれさばの味噌煮でも涼しい顔で作ることができるようになれば、案外、夫婦のコミュニケーションが深まるようにも思います。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)り一部を抜粋・編集したものです。