泉南市の中1生自殺問題を巡る
「三つの疑問点」

 Aさんが自殺した問題について、筆者が特に疑問を覚えるポイントは三つだ。

 一つ目は、全ての根源である小学校時代の担任の言動だ。教師がひきこもっている子の自宅に来て封筒でたたくことは、果たしてコミュニケーションの一環と言えるのだろうか。

 二つ目は、中学入学後のAさんへのいじめに対する、中学校時代の担任の対応だ。母親の手記の
通りだとすれば、「少年院帰り」「障がい」といった言葉を発した生徒を詳しく調べることもせず、「誰が言ったか分かるまで、学校側は指導しない」と突き放した態度を取ることは、果たして適切だったのだろうか。

 そして三つ目は、教育委員会の対応だ。「泉南市子どもの権利条例委員会」が独自に調査結果をまとめたものの、市長が受け取りを拒否したことは冒頭で述べた。だが、これとは別に、泉南市教育委員会が問題の究明や行政側の対応の是正に動くこともできたはずである。

 文部科学省が定める「子供の自殺が起きた時の背景調査の指針」には「児童生徒の自殺が,いじめにより生じた疑いがある場合は,いじめ防止対策推進法に規定する『重大事態』として,事実関係の調査など,必要な措置が法律上義務づけられる」と明記されている。

 にもかかわらず、泉南市教育委員会事務局が、市の教育委員や校長会に対して事実関係を何も報告していないのはなぜなのか。

 これらの疑問点のうち、最初の二つ(小中学校による一連の対応の是非)について学校側に取材したところ、泉南市教育委員会が「学校側の代理」として、以下のようなコメントを寄せた。

「もちろん当時の確認などはしているが、情報が一部なのか全貌なのかわからないところがあり、事実でないこともある」(教育部、以下同)

「自死なのかどうかとか、いじめが疑われるのかどうかとか、保護者から直接聞けていないので非常に制限がかかっている状態だが、情報は調べている。今後、あらゆる手段を使ってきちんと調べて対応していかないといけない案件だと思っている」

 また、三つ目の疑問点(教育委員会が真相究明に動かない理由)についても泉南市教育委員会に取材したところ、「背景調査は行っているものの、保護者に会えないため、Aさんが自殺なのかどうかの死因を確認できていないので、そこから身動きが取れない状況にある」と説明した。