市長が調査報告書「受け取り拒否」
その要因は「教育委員会からの指示」

 冒頭で触れた「泉南市子どもの権利条例委員会」は現在、「報告書受け取り拒否」をはじめとする市長らの対応を受け、行政側への不信感を募らせている。

 この問題の経緯を改めて説明すると、泉南市子どもの権利条例委員会はAさんが亡くなった後、「子どもの自死が学校生活と何らかの関係があると推測されるのに、教育委員会に報告もされず、何ら審議もしていないのは理解できない」として、2度にわたって意見書を冨森ゆみ子教育長あてに提出した。

 そして7月1日、泉南市の山本市長に「子どもの権利条例に基づいて検証が求められる重大な課題」だとする最終報告書を手渡そうとした。だが山本市長は、直接受け取ろうとはしなかった。さらに、泉南市役所の秘書広報課長にも、報告書を受け取らないよう指示した。

 総務省の担当者によると、市長の附属機関である委員会の報告書を、市長自らが受け取らない事例は「聞いたことがない」という。

 その経緯について取材を試みたところ、泉南市役所秘書広報課が取材に応じ、以下のコメントを寄せた。

「教育委員会の事務局から『内容に法的な問題があるのではないか』と(市長に)報告があり、(その意見を聞き入れた)市長から報告書を受け取らないよう指示されたので、受け取らなかった。市長は報告書の内容を把握していない。3月の生徒の自死についても、市長は5月に就任したばかりでどこまで把握しているかわからない。(教育委員会の)事務局から、市長が報告書を読めるように権限を与えてほしい」

 このコメントに含まれる「『報告書の内容に法的問題があるのではないか』と市長に報告した」という旨の事実関係を泉南市教育委員会に尋ねたところ、「概ねその通りだが、今はコメントできる状況ではない」と回答した。

 行政側による一連の対応を受け、泉南市子どもの権利条例委員会は7月8日午後6時に大阪市内で特別研究会を開催し、報告書の全文を公開した。

 公開された報告書には、Aさんの母親の手記を踏まえて、こんな文章が記されている。

「Aさんの生きようとした事実を、そこから受け止めようと読み返しました。学校や先生、教育委員会や市は、そして私たちの社会は、Aさんにとって、いったいどんな存在だったのでしょうか」

「なぜ当該子どもの自死を防ぎえなかったのか――この検証の一端を担うことが私たちに課せられています」