当面は「物価高」への対処が重要
日銀・黒田総裁の方針を支持

 当面の経済問題としては、資源価格上昇や円安から来る輸入物価上昇が波及したと見られる「物価高」への対処だろう。消費者物価指数で上昇率が2%を超え、電気代や食品など普通の国民の生活に近い物価はさらに上昇している状況は国民の不満につながりやすい。

 今回の物価上昇は、元々海外から輸入される資源の価格上昇に起因する。例えば原油・LNG(液化天然ガス)などの価格上昇だ。これらには、(1)日本人の所得を海外に流出させる効果があることと(この効果自体はデフレ的だ)、(2)エネルギー価格の上昇が止まると1年程度で「対前年比」の物価上昇率に対する影響が消えること、の二側面がある。

 そして現在の物価高は、需要が旺盛で起こっている物価高ではないし、物価上昇に見合うほどの賃金上昇を伴うものでもない。

 さて、当面の景気は、非製造業はコロナ自粛の解消を背景にやや好調だが、製造業は中国のロックダウンの影響などもあり好調とはいえない。

 円安は、企業の収益にはプラスで、これが国内の設備や人への投資につながる状況になれば、やがては賃金上昇にもつながるはずだ。ただ、しばらくは時間が掛かる(たぶん、1〜2年くらい)。

 当面の経済状況にあっては、金融引き締めによる需要の抑制は適切ではない。また、利上げによる円高で物価上昇を緩和しようとする政策も、経済が好循環に向かう可能性に水を差す要因になり得る。

 将来いずれかの時点では金融政策の引き締め方向への転換があるとしても、当面はアベノミクスの根幹である金融緩和政策を維持するべきだろう。筆者は、日銀の黒田東彦総裁の現在の方針を支持している。

日銀総裁人事に注目
筆者が推す「次期総裁候補」は?

 岸田政権の経済政策にあって影響が最大となりそうなものは、来春に交代する予定の日銀の正副総裁3人の人事だ。任期は5年なので、向こう5年間にわたる金融政策の方向性を大きく左右する。この人事にあって岸田首相が従来の金融緩和路線の修正にかじを切る可能性は小さくないと筆者は考えている。

 この人事においては、安倍元首相の存在感と影響力が大きいはずだったのだが、同氏の死去によって岸田首相は自分の意思を通しやすくなった。