NISAの大幅拡大とセットにすれば
弊害は小さい?

 庶民の投資はNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった投資優遇税制によって守られているため、金融所得課税が強化されたとしても影響がないはずだ。

 つみたてNISAだけでも1人800万円、夫婦で1600万円の株式投資が非課税で行える。総資産の3割を株で持つとすれば、総資産が5000万円あっても余裕ということになる。加えて、iDeCoの枠もあるわけで、それでも非課税枠が足りないほどの資産家は、「庶民」とは呼びにくい。「上級庶民」ということになるだろうか。

 そうはいっても、もし金融所得課税が強化されれば、世の中には「株式投資の税金が高くなったらしいから、やっぱり投資はやめておこう」と考える人たちが増えてしまう恐れがある。

 筆者としては、そうしたことも考慮し、NISAの非課税枠を1億円くらいまで拡大すればよいと考えている。1億円の株式投資をしても、税金が一切かからない、ということを周知徹底すれば、庶民も「上級庶民」も安心して投資ができるようになるからだ。

 金融資産を数億円も持っている人は投資をためらうようになることも考えられるが、そういう人にはしっかり税金を払ってもらってもいいのではなかろうか。富裕層の中には、節税対策として資産管理会社に株を移している人も多いだろうから、影響は小さいのかもしれない。

起業のインセンティブを
そいでしまうリスクも

 NISAなどは、上場株への投資を念頭においた非課税制度であるから、NISAなどの枠が大胆に拡大されたとしても、起業家が株式を公開する際には非課税制度が適用されないと思われる。