新しいロックダウンモード機能が表示されたiPhoneの画面深刻な標的型の脅威にさらされているごく少数のユーザーに対し、高度なオプションの保護を提供するための「ロックダウンモード」機能。今年の秋からiOS 16、iPadOS 16、macOS Venturaに搭載される Photo:Apple

アップルは米国時間の7月6日に、次期OS群で「ロックダウンモード」を提供すること、そして、対スパイウェア活動を行う市民社会団体をサポートする1000万ドルのサイバーセキュリティー資金援助を行うことを発表した。ここでは、WWDC 22とはあえて異なる時期に公開された、これらの情報を深掘りする。(テクニカルライター 大谷和利)

イスラエル・NSOグループ製スパイウェア「ペガサス」

 実はアップルは、ロックダウンモードの発表資料の中で、NSOグループ・テクノロジーズ(以下、NSOグループ)というイスラエルの会社を、国家支援型スパイウェア開発企業として名指しで非難している。

 2010年に設立されたNSOグループは、イスラエル参謀本部諜報局情報収集部門の出身者が多く在籍するとされ、複数の国の捜査機関や情報機関に対して、犯罪やテロ対策の名目で、「ペガサス」と呼ばれるモバイル端末用のスパイウェアを販売している。この企業に対する疑惑は、NHKニュースでも報じられたことがあり、アップルは、ペガサスの目的が犯罪防止などではなく、感染した端末から得られた情報を利用する金銭目当てのマルウェアだと断じている。

 また、(すでに多くの人の記憶からは消えているかもしれないが)2018年にサウジアラビアのジャーナリストで批評家、作家でもあるジャマル・カショギという人物が、行方不明になった事件があった。