5月12日、グーグルは「Pixel Watch」を秋に発売すると発表した。Androidスマートフォンと同様、グーグルは複数のメーカーにスマートウオッチ用OS「Wear OS」を提供しており、対応スマートウオッチも多数あるが、Pixel Watchは自社ブランドのスマートウオッチという位置付けで販売する。一方、スマートウオッチの代表格といえばアップルのApple Watchである。今後、スマートウオッチ市場はどうなっていくのだろうか。(テクニカルライター 大谷和利)
今やApple Watchは、スマートウオッチの代名詞的存在になっている。しかし2015年に初代AppleWatchが登場する前から、「スマートウオッチ」は存在していた。iPhoneがそうだったように、アップルはApple Watchを既存の製品ジャンルを再定義し得る原型となるべく開発し、独自のポジションを築いた。現在も大手スマートフォンメーカーや家電メーカーが、Apple Watchを意識しながらも、それぞれのブランドを冠した製品を販売している。直近では、グーグルも自社ブランドのスマートウオッチを発表し、この秋に販売が開始される予定だ。今回は、そんな昨今のスマートウオッチ事情を俯瞰し、これからの進化の方向性を考えてみる。
時計市場の4分の1以上を占めるApple Watch
さまざまな製品の業界シェアや個別企業の市場シェアに関するニュースを発信しているディールラボによると、2020年の時計メーカーの世界市場シェアにおいて、Apple Watchは28.3%と市場の4分の1以上を占め、2位以下を大きく引き離して独走態勢にある。しかも、これはスマートウオッチでのシェアではなく、スウォッチ(9.7%で2位)やロレックス(8.7%で3位)、ルイ・ヴィトンを擁するLVMHグループ(6.6%で4位)など、一般の時計メーカーも含めた数字なのだ。
スマートフォンの登場によって人々は腕時計をしなくても済むようになり、かろうじて嗜好品的な傾向の強い高級腕時計メーカーや気軽なファッションアイテム的な製品を提供する企業のみが生き残ってきた。だが、上の数字が示すように、その中にあってアップルは、再び腕時計(的なもの)を身に着ける習慣を復活させたといってよい。
アップル自身も第1世代のApple Watchでは、アーリーアダプターを取り込むためもあってデジタルファッション的な方向性のマーケティングを展開した。しかし、フィットネスやヘルスケア関連の機能を充実させる上での技術的な目処(めど)が立ったseries 2以降は、ユーザーの健康維持と身体異常の早期発見に欠かせないウエアラブルツールとしての性格をモデルチェンジごとに強めて現在に至っている。