昨今、値上げが激しい。一方、ここ数年来、さっぱり給料が上がらないビジネスパーソンのお財布事情はどうか。可処分所得が圧倒的に減少している人が多い中、こっそり稼いでいる人もいるという。その一つが副業だ。
人気YouTuber公認会計士でミリオンセラー作家の山田真哉氏は「副業でがっちり稼いでいる人がいるのは事実です。今、空前の副業ブームですが、実は副業には落とし穴も…」と語る。
そんな山田氏が「給料が下がり続けるビジネスパーソンに、革命的な本がある」という。
それが【真の「安定」を手に入れる シン・サラリーマン】(サラタメ著)だ。
著者のサラタメ氏は、6年前にブラックな職場でボロボロ→4年前にホワイト企業に転職&副業開始→現在登録者66万人超えサラリーマンYouTuberとなった。SNSではサラタメさんの癒しの言葉が多くの共感を集めている。
今回、山田氏に「今読むべき最強の一冊」について聞いた。
この本に注目した理由
公認会計士・税理士。芸能文化税理士法人会長、株式会社ブシロード社外監査役
著書『女子大生会計士の事件簿』(角川文庫他)はシリーズ100万部、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)は160万部を突破、YouTubeは登録者数40万人を超える。
【YouTube】
https://www.youtube.com/c/otakuCPA
【ツイッター】
https://twitter.com/kaikeishi1
今回、私が『シン・サラリーマン』で特に面白かったのは、「STEP2:副業力」と「STEP1:リーマン力(転職術)」です。
特に転職力といっても、みんな真剣に考えないと思います。
転職が体系立った学問にもなっていません。
経済学、経営学などは学問的蓄積があるわけですが、転職に関してはそれがない。
だから、みんな転職といっても、具体的にどうしたら正解なのかわからないわけです。
その意味で、今回、サラタメさんが本の中で、「転職学」への一歩を踏み出そうと意欲的に再現性への取り組みを言語化した功績は大きいと思います。
ある種の社会科学への挑戦なのかもしれません。
業界をずらすとか、業種をずらすとか、私は考えてもみなかったことです。
サラタメさんYouTubeと再現性の担保
サラタメさんのYouTube動画を拝見してびっくりするのは、かなりつくり込まれていることです。
本の書評がメインですが、本の書評自体が本として成立している感があります。
起承転結があり、全体の一貫性があるため安心して見れる。
それができるYouTuberは、そんなに多くないため、稀少性があるんですね。
人気YouTuberの中には有名人の個人技やテンションの高さで持っているものも多い中、サラタメさんの動画は、台本さえあれば、誰が話しても一定水準のクオリティを担保できると思わせます。
それは土台の軸(本づくりの部分)がしっかりしているからでしょう。
サラタメさんだからできるんだ、ではなく、日本全国の老若男女誰がやっても同じようにできる、いわゆる再現性の担保をすごく感じるんです。
これを31歳でやり遂げていることに、40代中盤の私は衝撃を受けます。
さらに、サラタメさんは元々芸能人でも会社のスーパースターでもなんでもない、いわば凡人代表。
その凡人のモットーは、この本の冒頭にあるとおり、
「ぬくぬくと心穏やかに生きていくためなら、どんな努力も惜しまない、意識低い目標に全力で挑んでいる人間」
と自身を評しています。
だから、読者も身近に感じるから、ベストセラーになっているのでしょうね。
さらに、この著者のおそるべきところは、読者がまったく気づかないところで、ビジネス書を読み尽くしてノイズを削ぎ落とした「ビジネス書文法」と、いかに読者をツカむかを熟知した「YouTube文法」をかけ合わせたところ。
いかに読みやすく、いかに短時間で役立つ情報を読者に血肉化させるかに水面下で苦心されているので頭が下がります。
いやー、こんな著者は見たことない。
なぜ600ページ超? という人がいるかもしれませんが、読んでみると、多分、これ以上でもこれ以下でも本が成立しないことがわかります。
本として、これ以上に削るのも難しく、これ以上増やすのもダメというラインがくっきり見える。
客観的に見れば多すぎる。
でも、読んでみると、これがちょうどいい。
最終的に610ページになった「必然」がわかります。
この本をひとことでいうと…
この本は、サラタメファンも、サラタメファンじゃない人でも、読んで、あ、サラタメさんというのはこういう人なんだなと、腹落ちする一冊、なのです。
ひとことでいうと、
「ビジネス書文法」というベースがありながら、中身は「YouTube文法」でつくられている稀有な本。
もしかしたら、私自身が本業の会計士をしながら、ミリオンセラーに恵まれ、現在42万YouTuberだからこそ見える世界なのかもしれません。わかりませんが。
『シン・サラリーマン』の編集さんが「生涯154作の書籍を担当してきて、一番読みやすい本」とおっしゃっていましたが、その理由がわかります。
文体だけでなく中身のビジュアル的な要素も大きいですね。
「YouTube文法」がバリバリ効いた
“売れるコピーライティングの教科書”
最後に、「YouTube文法」がバリバリ効いた本書の気になるフレーズを抜き出してみましょう。
「嫌いなアノ人はあきらめよう」(本書P58)
「いつも変人が勝ち続ける理由」(本書P108)
「クソ長い会議を短くできるのは若手だけ!」(本書P193)
「脳をあやつる交渉術7選」(本書P164)
「『後で考えよう』を撲滅せよ」(本書P178)
「教えて! 転職のザックリ全体像」(本書P234)
最後のフレーズが象徴的なので、簡単に説明しましょう。
「教えて」とすることで、この本の読み手の立ち位置が完全に「生徒側」になります。
下の立場から上の人へ聞くというのが、すごく伝わりやすい。
これが、単なる「転職のザックリ全体像」だけだと、ちょっと、無味乾燥とは言わないまでも、「教えて」があることで立体的になり、素人でも大丈夫と、敷居を下げつつ、全体に勢いをつける役割を果たしています。
これらの用語チョイスは我々YouTuberやブロガーが、日々、頭を悩ませているところですが、見事なところですね。
売れるコピーライティングの教科書としても本書を薦めたいと思います。
ぜひ、読んでみてください。
P.S.これまでの私の本連載もぜひご覧いただけたらと思います!
【第1回】【大人気YouTuber会計士が教える】副業力がつかない人の習慣ワースト3
【第2回】【ベストセラー会計士が教える】マネー力を上げられる人と上げられない人の決定的な差
【第3回】【さおだけ屋会計士・山田真哉が教える】「副業力」と「転職力」をダブル貯金する最強の一冊