韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「不安やゆううつ感に悩んでいる」「死にたいと考えてしまう」など、多くの悩みは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月14日に刊行となった。日本でも発売即重版となり、さっそく話題を集めている。今回は、本書の刊行を記念して、その一部を特別に紹介する。(初出:2021年8月8日)

精神科医が「自己中に生きろ」とすすめる納得の理由【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

他人を気遣いすぎると、自分が傷つく世の中

 現代社会では、自分の気持ちを顧みずに他人に気を遣いすぎる人は、むしろ相手に違和感を与えます。やたら気を回しすぎる人というのは、わざとらしく映る場合もあるからです。「ひょっとして何か下心があるのでは?」「後で大きく裏切られるのではないか」と、親切にしても、ほかの意図を勘ぐられてしまうのです。

 とても気が利いて献身的な人が、学校で無視されたり、会社で仕事を押し付けられたりする理由がここにあります。本人は良かれと思って他人に親切にしたとしても、すべての人がそれをありがたく受けとめるわけではありません。

 特に職場などの競争関係にある場所では、本人が一生懸命になればなるほど、まわりからは「あなたがそんなに必死にやったら私たちの立場はどうなるの?」と嫌がられたりもします。苦労だけは人一倍しているのに、なぜか良い評価につながらないのです。

 その場では感謝されるのに、裏では悪く言われて疎外されてしまいます。しかもその原因は自分にあるというのですから、本人は納得いかないでしょう。

人間とは本来、自分中心である

 生きるうえで自分のことだけを追求すべきなのか、他人のために献身的に生きるべきなのかという話には慎重にならざるを得ません。

 それでも、私はいつでも、「自分自身を一番に考えなさい」と言っています。患者の置かれている状況によっては「自分勝手と思っても利己的に判断し、行動しなさい」と強くアドバイスすることもあります。それが正しい優先順位だからです。

 私は、本来、人間の本能は利己的だと考えています。それを認めて受け入れることが、自然で成熟した姿勢だと思います。

 もちろん、世の中には他人のために奉仕する利他的な人生を送る人も少なくありません。彼らが他人を助ける理由は何だと思いますか? それが本人の喜びだからです。他人を助ける喜びを感じたいから、持続的に行動できるのです。

 もちろん彼らを非難しているわけではありません。むしろ尊敬しています。なぜなら彼らは、“他人を助ける喜び”を知っている成熟した人間だからです。自分の本当の心の中の喜びを享受できているのです。

 これは、子どもに対する親の愛情も同じです。親は子どもの幸せを願います。子どもが笑うだけでも幸せを感じます。親が子どもがいつでも笑顔でいられるように行動するのは、それでこそ自分も幸せだからです。

 子どもたちを愛するときも、ボランティア活動を行う場合も“自分の幸せ”を追求するレベルで行えば後悔もありません。

 どうかみなさんも、人間とは本来、自分中心であることを認めてください。それでこそ雑念なく愛することができ、心から他人のためにも行動できるのですから。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。