なぜ下北沢は「大改造」後も支持を集めているのか

 街の再開発というのは、えてして否定的に捉えられがちなものだ。しかし下北沢の再開発は否定的な意見よりも、歓迎する声のほうが多く寄せられている。

 なぜ下北沢の再開発は、あれだけ従来の景色を一変させたにもかかわらず、肯定的に捉えられているのだろうか。

下北沢「サブカルの街大改造」が成功した理由、渋谷の再開発になかったのは?tefu lounge下北沢 Photo: Nakasa and Partners
下北沢「サブカルの街大改造」が成功した理由、渋谷の再開発になかったのは?

 理由の一つは、「街の空気」を絶やさず、文化との共生を目指していく独自のコンセプトだろう。2017年から小田急電鉄で下北沢エリアの再開発事業を手掛ける橋本崇氏は、下北線路街エリアの開発テーマを「支援型開発」とし、計画段階から地域住民・店舗との密接なコミュニケーションのもと、あえてコンセプトや運営方針を固めすぎないよう細心の注意を払っていたこと、街の再開発とは長い時間をかけて培われる「発酵」であり、企業主導ではない町作りを意識してじっくり進めていることを説明している(https://exp-d.com/interview/8815/)。

 また、下北沢周辺には耐震性の問題などを理由に取り壊される大型ビルが少なく、再開発に伴って街のランドマーク的な施設が失われてしまうことが、渋谷などのエリアに比べ少なかった。そのため、古いまま残されたライブハウスや劇場などが一定数以上あり、加えて新たにナイトクラブやバーなどが誕生したのも理由として挙げられるだろう。