ネットのつながりは「数より質」
フォロワー整理でスッキリ

 これまで取り上げた2冊は、ジャーナリズムや医学の観点からスマホ依存の怖さを解説する“硬派”な内容だ。そこで最後の1冊は、肩ひじ張らずに読める書籍をピックアップした。

 その本とは『デジタルデトックスのすすめ 「つながり疲れ」を感じたら読む本』(米田智彦著、PHP研究所)である。

 本書では、編集・執筆業をなりわいとする米田氏がさまざまな「スマホ断ち」の手法に挑戦し、その感想を紹介している。書かれた時期は13年頃だが、今でも参考になる内容だ。

 SNSが盛んになり始めた当時、「ネットやスマホに『使われている』怖さがある」と感じた米田氏は、利用を控えるために多様な“自分ルール”を課していく。

 具体的には「就寝2時間前にスマホの電源を切る」「紙メディアを読む」「メールの確認は1日2回までにする」などだが、特に思い切ったのは「広げすぎたFacebookやTwitterのつながりを整理する」だ。

 SNSではフォロワーや友達の数が一種のステータスになりがちだが、米田氏は「つながりは『数』より『質』が大事」と言い切る。一方的に広告や宣伝を流してくる人は「要らない友達」「邪魔になるだけ」とバッサリだ。

 不要なつながりを減らした結果、余計な情報やイベント招待が減って「すっきりした」と米田氏。人と直接会うことを大事にすれば、仕事の質の向上にもつながると力説している。

著者のトライ&エラーが
スマホと向き合うヒントになる

 本書では成功体験だけでなく、笑える話や失敗談も披露されている。

 デジタルデトックスの一環で「滝行」に挑戦したものの、自身が滝に打たれている姿を記録したくなり、スマホの電源を入れ直して参加者に写真を撮ってもらったエピソードは思わず笑ってしまう。LINEやメールをチェックできずに不安になったこともあるそうだ。

 そんな体験談から学べるのは、スマホが連絡・記録手段として優秀であり、日常生活に欠かせないのも事実だということだ。

 スマホの使いすぎが良くないことは確かだが、「一切使わない」ことが適切な対処法だとは言い切れない。だからこそ、現代人にはうまく付き合う工夫が求められる。

 試行錯誤の過程が軽妙な文章で記されている本書は、そうした工夫の指針になる一冊だ。

 なお今回は、すでに多くのメディアが紹介していることから、21年にベストセラーとなった『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳、新潮新書)はあえて選外とした。

 ダイヤモンド・オンラインでも、『スマホ脳』の書評記事『スマホの過度な使用が「記憶力」を劣化させるメカニズム』や著者インタビュー記事『大ベストセラー『スマホ脳』著者が明かす、「脳の老化を防ぐ」簡単な方法とは』を掲載している。興味がある人はぜひ併せてチェックしてほしい。