「eスポーツ」というジャンルの認知度が高まり、「プロのeスポーツ選手」が小中学生の「なりたい職業」の上位に入るケースも増えた。だが医学的な観点では、ゲームはれっきとした依存物である。一般のスポーツとは異なり、練習や指導の方法が確立されているわけでもない。時間を問わず、際限なくプレイした結果、ゲーム依存の悪化・長期化をまねく可能性もある。eスポーツ選手を目指す未成年者を、周囲の大人が安易に応援することの危険性について、精神科医・中山秀紀氏の著書『スマホ依存から脳を守る』(朝日新書)から、一部抜粋・再編集して解説する。
一般的なスポーツとeスポーツの比較
「eスポーツ」(イースポーツ)という言葉を、最近よく耳にするようになりました。
eスポーツとは、コンピューターゲームの一種である、対戦型ゲームを競技として捉えた際の名称です。ゲームの対戦をスポーツの競技になぞらえ、多額の賞金が出る大会が開催され、ゲームで生計をたてる「プロゲーマー」と呼ばれる職業も出現しています。
賞金総額百億円以上の某シューティングゲームの大会がニューヨークで行われ、青少年と思われる日本人選手も活躍したことが、小学生向けの漫画雑誌にも華やかに掲載されています。そこには決勝に進出すると六百万円以上、ソロの優勝者には三億円以上の賞金が出たことが書かれています。この一攫千金の夢に胸がときめいた小学生も多かったのではないでしょうか。
2019(令和元)年に茨城県で行われた国民体育大会の文化プログラムで、全国都道府県対抗eスポーツ選手権が開催されました。そして一部の学校では、こうしたゲームを部活に取り入れているようです。自治体や学校(特に公立)での活動にeスポーツを取り入れるということは、「ゲームは教育的に良い」とお墨付きを与えたと捉える人もいるのではないでしょうか。
なお、遊びを部活に取り入れるという点については問題ではない、と私は思っています。遊びと学業の間に明確な境界線はありませんし、たとえば囲碁、将棋、野球も遊びです。そうではなく依存物であるゲームを競技としたり、学校で推奨したりすること自体が問題だと思うのですが、それ以外にも再考すべき点があります。