ただ、一方で人気者ゆえに海外では偽物、パクリ商品が横行してしまう。国内外でくまモンの名前やイラストの使用料は取らない方針だったが、見かねた県は海外に限り、2018年からロイヤルティーの徴収に踏み切ったという。

「我々は利益ではなく、熊本県のPRを目的としていますし、より多くの人にくまモンを使っていただきたいので、くまモンの利用料は国内外で取らない方針でした。しかし、かわいくないくまモン商品のまん延はブランド価値の低下につながります。なので、海外でのくまモンの運用をキャラクタービジネス展開を得意とする大手広告代理店にお願いし、徴収したロイヤルティーの一部を偽物対策に充てることにしました。現在では、くまモンの使用を許可した海外企業は210に上っています。一方で国内においては引き続き許諾制のロイヤルティーフリーを続けています」

 こうした楽市楽座的な展開やロイヤリティ徴収による展開など、巧みな商品化ビジネス手法が光るくまモン。このような国内外への長きに渡るキャラクタービジネスへの功績が評価され、くまモンは「日本商品化権大賞2021」において特別栄誉賞を受賞している。

北京に専門チームを設置し
SNSで刺さる動画を発信

 くまモンはインバウンド効果ももたらしている。くまモンの情報やグッズがそろい、ステージも用意されている熊本市の「くまモンスクエア」にはコロナ禍前には、外国人ファンが大挙して押し寄せていたという。

「くまモンスクエアの来場者はコロナ禍前には毎年約50万人でしたが、その半数が主にアジアからの観光客でした。また、中国の方はクルーズ船でも熊本にいらっしゃいますが、そのクルーズ船の拠点となる熊本県八代市の港湾施設の愛称も『くまモンポート八代』に決まりました。こちらも、くまモン人気があったからこそなんです」

 ただ、くまモンポート八代の完成は2020年3月とあって、コロナ禍の中ではなかなか本来の役割が果たせていない。これだけにとどまらず、コロナ禍ではイベント開催も難しくなり、徐々にくまモン自体の活動の幅も狭まっていった。しかし、その中で力を入れたのが、冒頭のような海外向けの動画配信だ。

「以前から『くまモンTV』というYouTubeチャンネルがあり、そこに英語などのテロップをつけて海外からの視聴を期待しましたが、海外の視聴者数はなかなか伸びませんでした。コロナ禍でくまモンが海外に行くこともできないので、忘れられてしまう危機感を持っています。そこで、国内向けのコンテンツをただ外国語対応して配信するのではなく、海外向けに特化したコンテンツをしっかり予算をつけて始めることにしたんです」