米国でウェブトゥーン作品がマンガの賞を受賞

 7月22日、「マンガ界のアカデミー賞」とも呼ばれる「アイズナー賞」の授賞式が米国で行われた。この賞は米国で権威あるマンガ賞の一つとされ、創造力や影響力がある作品へ、部門ごとに賞が贈られる。過去には大友克洋氏の「AKIRA」や、浦沢直樹氏の「20世紀少年」、東村アキコ氏の「東京タラレバ娘」も、アイズナー賞を受賞している。そして今年、「ベスト・ウェブコミック部門」を受賞したのは、韓国のネイバートゥーンで連載されている「ロア・オリンポス」という作品だった。

「ロア・オリンポス」は、ニュージーランド出身のマンガ家、レイチェル・スマイス氏の作品。ギリシア・ローマ神話を現代風に再解釈した、ユニークなストーリー設定と独特な画風の作品である。2018年3月に韓国で連載がスタートし、現在まで韓国、欧米の他、日本でも「LINEマンガ」で配信されている。

 またこの作品は昨年も、同じく米国のマンガ賞である「ハーベイ賞」の「デジタル図書部門」を受賞している。米国でまさにウェブトゥーンの力を見せつけている作品なのである。

 ウェブトゥーンといえば、この「ロア・オリンポス」のように歴史的な話を再解釈したものや、主人公が転生したり、ある人物に憑依して別世界で生きることになったり……という設定やストーリーが定番である。日本のようなマンガ・アニメ大国から見れば、ウェブトゥーンはまだまだ歴史も浅く、作品の層やジャンルに薄さや物足りなさを感じてしまう人もいるだろう。

ドラマ化され、Netflixで世界配信される

 ウェブトゥーン作品の成功パターンとして大きいのが、作品のドラマ化である。「女神降臨」「わかっていても」「D.P.-脱走兵追跡官-」「キム秘書はいったい、なぜ?」「今、私たちの学校は…」など、ウェブトゥーン発の人気ドラマはたくさんある。また、これらの多くはNetflixで世界配信されており、ウェブトゥーン作品が広く知られるきっかけになっている。

 日本ではしばしば、マンガ家の休養のニュースが報じられると、その働き方が話題になる。特にマンガ雑誌に週刊連載するとなると、アシスタントを起用していてもマンガ家の制作時間は非常にハードといわれている。

 一方、ウェブトゥーンは、ストーリー構成、作画、彩色などの作業がチームによる分業制で進められるので、日本のマンガ家に比べると作者が疲弊しにくい。また、この制作スタイルのおかげもあって、ストーリーや作画が映像化をイメージしやすい仕上がりになっているという点も、ドラマ化のしやすさにつながっている。こうして、ウェブトゥーンを原作とする映像作品をNetflixが制作し、世界中に配信するという流れが出来上がった。両者がタッグを組むことによって世界的なヒットになるという方程式が確立しつつある。