教育現場で今、子どもたちのあいだで増える“トイレに行けない症候群”が問題になっている。多くの子どもたちが「和式だから使えない」「臭いし汚いから近づかないようにしている」と改修が進まない学校のトイレを嫌い、使えずにいるというのだ。
便器の国内シェア80%を持つTOTOは、内装メーカーや清掃メンテナンス会社と1996年に「学校のトイレ研究会」を発足し、学校のトイレを調査してきた。学校のトイレに関する公的なデータが少ないため、民間での調査を通じて全国1800の自治体や国に、事の重要性を訴えているのである。
最新調査結果からは、近代化の遅れによる“トイレに行けない症候群”の深刻化が浮き彫りになった。「多くの学校がトイレの5K(臭い・汚い・怖い・暗い・壊れている)に悩んでいる」とTOTOは指摘する。住宅やオフィス、商業施設のトイレは最新鋭の機器が入り、綺麗で明るく趣向を凝らしたものに進化している。一方、全国の小中学校ではトイレの改修を20年以上行っていない学校が約5割にのぼった。
子どもたちにすれば、自宅と学校のトイレのギャップがあまりに大きい。トイレを我慢することは子どもの健康に悪影響を及ぼすだけに、教職員からは切実な声が上がる。「学校で子どものために改善が必要な場所はどこか」との問いに対し、「校舎の耐震化」を上回り「トイレ」が圧倒的に多い。しかし、予算の都合もあって改修によるトイレ環境の改善は思うようには進んでいない。
改善のポイントは大別すると3つある。まずは便器の洋式化だ。ほとんどの子どもが洋式を希望するなか、7割以上の学校で洋式よりも和式が多い。トイレは全て和式という学校も約1割ある。
「今どきの子は和式トイレも使えないなんて、軟弱だ」と眉をひそめる大人もいるが、これは精神論だけでは片付けられない。というのも衛生面から見て和式は難点が多い。和式便器のまわりは尿が飛び散り、汚れや雑菌の温床だ。それらが靴の裏について教室や廊下に広がり、子どもたちが床で遊んで転げ回れば、感染症も引き起こしかねない。