日本一寒い旭川の自然環境を活用し、
地域と連携する酒造り
日本一の最低気温であるマイナス41度(1902年)の記録を持つ北海道旭川市。厳寒の地の酒蔵、髙砂酒造の名物は、新酒を詰めたタンクを雪で覆って100日間熟成させた雪中貯蔵酒だ。
「やわらかく、まろやかな酒になります」と杜氏の森本良久さん。
旭川は1891年に屯田兵が入植し、開墾が始まった。稲作は不向きといわれたが米が収穫でき、1899年に小檜山鐵三郎さんが酒蔵を創業。第7師団が移駐し、経済と産業が発達。北海道第二の都市に成長した。
酒造業は「北海の灘」と呼ばれるほど盛んになり、全国酒類品評会で一等を受賞するなど品質も評価された。1929年に鉄筋コンクリート造りの製造工場ができると、質と量も安定。
だが、その後、所有したゴルフ場がバブル経済崩壊で倒産。経営を悪化させ、髙砂酒造は民事再生法を適用。2005年に札幌の日本清酒の再生支援を受けた。
苦難を乗り越え、目指したのは“この地でしかできない酒造り”だ。
原料米は北海道の酒米、吟風、彗星、きたしずくが9割。旭川農業高校の生徒と一緒に酒米を育てて酒を造り、当麻町、沼田町、新篠津村とも連携し、当地の米の酒を醸して商品化する。また、酒粕を活用した商品開発に地元企業と取り組み、酒粕ブルーチーズや、酒粕を飼料に加えた旭髙砂牛、酒饅頭など多数の商品が誕生した。1909年築の元蔵を改装した直売店では地域連携商品を揃え、蔵見学も受け入れる。
地力を生かし、誇れる旭川の酒造りに邁進する。
●髙砂酒造・北海道旭川市宮下通17丁目右1号●代表銘柄:国士無双、旭神威、大雪、若蔵●杜氏:森本良久●主要な米の品種:吟風、彗星、きたしずく