お客様が感じる「価値」を中心に考える
次に、その強みはお客様にとって「どういう価値」があるのかを考えます。
たとえば、ファストフードのコーヒー業界でいえば、スターバックスの持つドトールに対する独自の強みは、「落ち着いた雰囲気と店員さんのホスピタリティ」になりますし、逆にドトールのユニークな強みは「リーズナブルな価格でコーヒーを提供できる」ことになります。
強みを考える時に注意したいのが、お客様が感じる「価値」を中心に考えることです。
たとえば、私が在籍していたアマゾンでは、地球最大の書店を目指していたので「品揃え=商品点数」をとにかく多くすることを目指していました。
また、1クリックでも早く効率的にお客様の欲しい商品がわかる合理的なサイト作りを重要視していました。ログインすると、一度買った本に近い本がアマゾンのページに出てきたり、メールで送られてきたりする「レコメンデーション機能」などがそれに当たります。
マーケティングを行う側のマーケターからすると、独自な強みを表現するときに、「オンライン書店最大の品ぞろえ」とか「機能性が高いサイト構成」としがちです。
しかし、お客様にとってアマゾンで本を買う時に感じる最大の価値は、「自分が欲しい・探している本がすぐにわかる便利さ」ということになります。
山のようにある出版物の中から、すぐに自分の欲しい本を見つけることができ、しかも最短で翌日には手元に届くことで、探す時間と買いに行く時間をセーブすることができ、その時間を「自分のほかの時間に充てられる」ことが、お客様目線で考えた時の最大の価値になります。
ユニークな強みを考えることは、何も大企業だけに必要なわけではありません。私のクライアントさんで、愛知県で頑張る中堅規模の引越一番という引越し会社があります。
中堅企業である引越一番さんが、大企業の経営資源を活用した価格や広範囲にわたるサービス網に正面切って挑んでいくことは容易ではありません。どうしても値引き合戦になったりしてしまい、収益を悪化させてしまうことになりがちです。
引越一番さんの独自なお客様への価値は「懇切丁寧な引越」を提供することです。もちろん大企業の引越しサービスも丁寧だと思いますが、掃除を欠かさなかったり、新築のお宅にはいる時には靴下を履き替えたりと、細部にわたってまで気遣いを欠かしません。
このホスピタリティで、「また引越一番さんにお願いしたいです」とお客様からわざわざ電話がかかってくるほどです。
引越一番の事業は、「運輸業」ではなく「お客様が幸せを感じる本物の引越し」を提供する事業と言えますが、この細部にわたる気遣いと丁寧な作業による「新居に引っ越した時の幸せ感」が、他社と比較した場合のユニークな顧客価値になるのです。