「物価高倒産」が急増している。小麦や油脂のほか、原油高による物流費や包装資材、電気料金などの価格高騰が最後の追い打ちとなり、企業収益の悪化から倒産に至る企業が足元で増えているのだ。苦境の実態について、独自集計データとともに解説する。(帝国データバンク情報統括部 内藤 修)

今夏に閉店した
地元で人気のベーカリー

閉店を知らせる張り紙撮影:帝国データバンク

 帝国データバンクによれば、8月の「物価高倒産」は34件判明し、月間最多だった7月(31件)をさらに上回り、2カ月連続で最多を更新。前年同月(13件)の約2.6倍に急増している。

 原油や燃料、原材料等の「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力などで価格転嫁できなかった「値上げ難」などにより、収益が維持できずに倒産した企業を独自に集計した。2022年の累計は1~8月で150件に達し、調査開始の2018年以降で最多となった2021年(138件)を8月時点で上回り、年間最多を早くも更新した。

 東京・四谷三丁目のベーカリー「マミーブレッド」(東京都新宿区)は8月10日、近時の物価高が影響し閉店に追い込まれた。同社は1984年10月に設立され、東京メトロ丸ノ内線・四谷三丁目駅から徒歩数分の立地に店舗を設け、パン・サンドイッチの製造のほか、店舗を併設して飲食部門の運営も行っていた。