「人間は醜い」「みんな同じなんて気持ち悪い」といったストレートなフレーズ。著者のいたたまれない体験。そして私たちが持つ家族観や結婚観などが、日本固有の、かつ、ごく短い時期の社会通念に過ぎないという事実。これらの要素を交えながら、魂のこもった文章が綴られていく。多くの読者が共感し、心解き放たれ、救われるに違いない。(山下愛記)

本書の要点

(1)友情も恋愛も親子愛も兄弟愛も、すべてが素晴らしいなどということはあり得ない。人間には醜い面があるのだから、少し離れてつながろう。
(2)集団の中で「人からどう思われるか」を基準に生きるのはやめよう。悪意のある視線から離れ、やさしい視線のある場所のゆるい人間関係に乗り換えることだ。
(3)家族とは、たまたま至近距離に居あわせた特殊な人たちでしかない。愛に溢れた家庭のイメージは、もともと啓蒙のために上から押しつけられたものだ。愛着を感じる対象は人でなくてもよい。

要約本文

◆すべての悩みは対人関係の悩み
◇人間は醜い。少し離れてつながろう

 著者が人生で一番悩んだことは、間違いなく人間関係だ。過去の日記にも、ほとんど人間関係のことが書かれていた。心理学者のアドラーも「人間の悩みはすべて対人の悩み」と言っている。

 一方で、人間関係の悩みは口に出すには差しさわりがあり、あまりないことになっている。代わりに、学校や会社などの社会の問題が取り上げられている。しかし、その背後では“人間”が一番の原因になっているかもしれない。

 著者は高校生のとき、社交不安障害(対人恐怖症)になった。周囲の視線がやさしいものだったら違っていたはずだ。子どものいじめも、親の暴力も、問題だと思われるようになったのは、つい最近のことに過ぎない。我々は人間関係からくる苦しみを、問題として取り上げてこなかったのだ。

 友情も恋愛も親子愛も兄弟愛も、すべてが素晴らしいと考えるのではなく、悪い面もあると考えるのが普通だろう。人間には醜い面があるのだから、少し離れてつながることを考えた方がいい。