『完全自殺マニュアル』の著者が生きづらい人に贈る「人間関係の降り方」友情も恋愛も親子愛も兄弟愛も、すべてが素晴らしいと考えるのではなく、悪い面もあると考えるのが普通だろう。人間には醜い面があるのだから、少し離れてつながることを考えた方がいい(写真はイメージです) Photo:PIXTA

おすすめポイント

 本書『人間関係を半分降りる 気楽なつながりの作り方』のタイトルに目が留まった人は、人間関係で悩んだことのある人だろう。そして、それはほぼすべての人のはずだ。「人間の悩みはすべて対人関係の悩み」と言ったのは、心理学者のアドラーである。

『人間関係を半分降りる 気楽なつながりの作り方』書影『人間関係を半分降りる 気楽なつながりの作り方』 鶴見 済著 筑摩書房刊  1540円(税込)

 本書が考えるのは、仕事相手や友人、家族、恋人、そしてSNSで目にする人といった、あらゆる人間関係をめぐる「生きづらさの最終的な解決法」だ。

 著者は、1993年に刊行された『完全自殺マニュアル』で脚光を浴び、その後も生きづらさの問題を追い続けているフリーライターの鶴見済氏である。10代から社交不安障害を患っていたことや激しい家庭内暴力にあっていたことなど、自身の悲痛な体験をシェアしながら、現代日本の生きづらい状態から脱するための「やさしい人間関係の作り方」を伝えてくれる。

 著者が指摘するとおり、今の日本には、会社、学校、家庭の3領域以外の居場所がほとんど育っていない。それらの「固く閉ざされて密着した世界」で、つらい人間関係から逃れられなくなっている。本書は、そんな生きづらさを抱いているすべての人にとっての「心の処方箋」だ。