エレベーターや電車内で中国人が大声を出している風景に出くわすことが多い、と日本人は思っている。しかし、中国人からは、日本人はなぜ不機嫌に黙り込んでいるのかと思われている。その認識のギャップは、中国人と日本人のモチベーションファクターの違いにある。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

公共の場で黙りこくる
日本人は「不機嫌の塊」に見える

日本人と中国人では「気を使う相手」が違うようです。エレベーターや電車の中で会話をすることは是か非か。マナーの良し悪しではなく、日本人と中国人の考え方の違いが現れている Photo:PIXTA

 中国人のビジネスパーソンO氏と、日本のオフィスビルでエレベーターに乗っていた時のことだ。すし詰めというほどではないが、数人の人がいて、皆、黙って乗っていた。

 O氏が私に話しかけてきた。O氏の普段の声量なのだが、シーンとしたエレベーターの中では声が響き、乗っていた人の中には、はっとした様子で振り向こうとした人もいた。私は「降りてから話しましょう」と言って、O氏をやんわりと制した。

 その後、O氏から言われたことが忘れられない。「日本人は、エレベーター内でなぜ、あんなに黙りこくっているのか。電車の中でも同じだ。1人で乗っている人はまだしも、複数で乗っている人同士、なぜ、普通に会話をしないのだ。会話をしていたとしても、ぼそぼそと、まるで内緒話をしているかのようだ。日本人はまるで不機嫌の塊ではないか」という意味の内容だ。

 日本のオフィスビルのエレベーターには、「エレベーター内では会話を慎みましょう」「ビジネス会話はご遠慮ください」と、表現こそさまざまだが、会話を控えることを勧める掲示がされていることが多い。ビジネス会話を禁止しようとしているのは、社員向けの機密保持目的のメッセージだろうが、会話をしないことを勧めているのは、他の乗客への配慮だ。その間、同行者がいれば、同行者に対して話すことは遠慮するということが推奨されている。

 電車の中でもそうだ。「携帯電話は設定をマナーモードにして、会話はお控えください。優先席付近では電源をお切りください」という放送が流れたり、掲示がされている。電車の中で大きな声で話すことは、他の人の迷惑になるというように考えている人が多い。