ロシアがサハリン2で
さらなる「脅し」の可能性も

 今回のケースでロシア政府は両社の参画を承認したわけだが、ロシア外交官の日本からの国外追放、日本外交官のロシアからの国外追放、ロシア向けぜいたく品禁輸、ビザなし交流の失効措置など、今日、日露間では制裁措置の応酬が展開されており、今後も日露関係の冷え込みの長期化は避けられない。

 こうした中、ロシア側が日本を政治的に揺さぶるため、サハリン2において第2弾、第3弾の脅しを見せてきても不思議ではない。エネルギー事情などロシア側も日本の政治、経済、社会情勢を日常的に分析し、日本にとって痛い部分を突いてくる可能性がある。

 政治と経済のジレンマゾーンの拡大は、今日の大国間競争によっていっそう拍車が掛かりそうだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻から半年が経過するが、欧米や日本などによる対露制裁の限界が色濃くなっている。実際、ロシアに制裁を強化したのは40カ国あまりしかなく、中国やインドを筆頭に、東南アジアや南アジア、中東やアフリカ、中南米カリブなどの国々はほとんど制裁に加わっていない。

 ウクライナ侵攻で拍車が掛かった世界的な物価高もあり、アジアやアフリカなどの中小国の中には米中対立、米中露の大国間競争などに巻き込まれたくない、疲れたと思う国々も少なくなく、各国とも国益を最大限引き出すため独自のスタンスで行動している。

 こういった国際政治の動向が、プーチン大統領の強気の姿勢を助長している。最近ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムでも、プーチン大統領は欧米陣営を強く非難し、中国やインド、ミャンマーなどとの結束を強く示した。中国にとっても対米という中ではロシアと共闘する大きなメリットがあり、9月に入っても両国軍が日本海やオホーツク海で合同軍事演習を実施するなど日本や米国を強くけん制したように、今後は政治・経済の両面で中国とロシアの結び付きが顕著にみられることだろう。