欧米陣営と非欧米陣営で
部分的な経済デカップリングも

 そうなれば、米中経済の完全なデカップリング(切り離し)は非現実的だが、経済圏で米国主導の欧米陣営、中露主導の非欧米陣営という形である程度のブロック化が顕著になってくる可能性を、我々は考える必要がある。

 今日の台湾情勢がさらに緊迫化すれば、安全保障的に対立軸にある日中の関係が冷え込む可能性が高く、中国で操業する日本企業の経済活動に制限が出てくる恐れが考えられよう。2010年9月の尖閣諸島における中国漁船衝突事件の際、中国側は報復措置としてレアアースの対日輸出を停止させたことがある。中国にとって尖閣諸島も台湾も絶対に譲ることのできない核心的利益であることから、日本としては台湾有事の際に中国からどういった対抗措置が取られるか、2010年9月の経験から戦略的に考える必要がある。

 しかし、こういった政治リスクが現実的に考えられるものの、企業にとって撤退や規模縮小というのは決して簡単な経営判断ではない。また、今回のサハリン2のように日本のエネルギー安全保障、また経済安全保障に絡むような極めて公益性が高い問題となると、“リスクがあっても継続しなければならない”という場面がある。こういった日本企業を悩ます政治と経済のジレンマゾーンは、今後拡大する可能性が高い。

 中国は依然として日本にとって最大の貿易相手国であり、日本企業の脱中国には限界がある。しかし、日中間で政治リスクが高まる恐れがあり、日本企業を悩ます政治と経済のジレンマゾーンが拡大する可能性を我々は認識する必要がある。

(オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学講師〈非常勤〉 和田大樹)