反社チェックとは、取引相手などビジネスで関わる相手が、反社会的勢力の構成員を関係者に含んでいたり、反社会的勢力との取引を行っていたりしないかを事前に確認することだ。それなりに面倒な手続きだが、現代のビジネスにあっては常識的に要請されるプロセスで、大手の会社では社員へ定期的に研修を行うのが通例だ。

 今では、たいていの契約書に反社排除に関する条文が載っている。本を出す際に著者と出版社が交わす出版契約書にさえ載っているくらいだ。

 今回、旧統一教会の問題が出た時に、政治家の側からは次のような声が出た。「選挙の現場では、支援してくれるという人を断ることはまずないし、その人のバックグラウンドについていちいち調べたりしない」というのだ。

 ビジネスパーソンの感覚として、「われわれだって反社チェックくらいはするのに、政治家という商売はそんなにいい加減なのか」という感想を持った向きが少なくあるまい。

 今後、政治家の世界にあって、「宗教版反社チェック」が導入される可能性は小さくないと思われる。

「宗教版反社チェック」の危うさ
思想信教の自由との関係は?

 ところで、「宗教版反社チェック」に問題はないのか。

 茂木幹事長は「旧統一教会および関連団体とは一切関係を持たないこと、また、社会的に問題が指摘される他の団体とも関係を持たないこと」を党の方針として決定したという。

 ここで、旧統一教会および関連団体が今後排除リストに加わるとして、別の団体に対して「一切関係を持たない」ことの根拠が問題になる。それは、何らかの違法行為なのか、社会的評判なのか。

 憲法を素直に読み、社会常識に従うかぎり、日本国民には思想信条の自由がある。どのような宗教や思想を信じようと自由なはずだし、そのことによって政治活動に制約を受けるべきではないというのが大原則だ。

 政治家にとって本来この原則は重いはずだが、今回の岸田政権の方針は、この点との整合性を十分考えたものなのだろうか。

「何はともあれ、旧統一教会は今話題で評判が悪いので、関係を絶つと言い切ることが大事だ」(「言い切る」だけかもしれないが)ということだけから、「党にいてもらうことはできない」と言い放ったのだとすると、いささか短慮だ。後のことを考えているのだろうか。