つまりスマートフォンのアプリ開発のようなアジャイルな発想で「ちょっとバグがあったから直そう」「ユーザーの反応が良くないからこの部分を実験的に少し変えてみよう」といったことが気軽にできるようなものではないのが、スマートコントラクトです。組み込みシステムや自動車のソフトウェアと同じようなものと思った方がよいでしょう。

 また、投票によるコミュニティであるDAOは、その活動に興味・関心がある、トークンを持つ人々の意思によって運営されます。ただ、その人たちがいつまで組織にコミットし、きちんと投票などのスマートコントラクトの動作のもととなるような行動を取ってくれるかはわかりません。出来上がった当初は期待があり、参画する人もいるDAOですが、徐々にコミットメントが少なくなっていったときに、そのDAOをどうするかという点は難しい問題です。

 組織運営をスマートコントラクトによって機械化することで透明性を確保するという点で、理想的な組織に見えるDAOですが、やはり運営にあたっては泥臭い人間的な部分は残ります。そういう部分をどこまでコード化できるかという点も、課題と言えるでしょう。

 DAOコミュニティの運営方針を議論したり決定したりする方法には、トークンによる投票などブロックチェーン上で行う「オンチェーン」と呼ぶものと、「オフチェーン」と呼ぶチェーンの外の仕組みを使うやり方とがあります。現在主流の方法は、音声チャット・メッセージツールの「Discord」を利用するもので、ブロックチェーンも活用していませんし、議論のコード化も行われておらず、決して非中央集権でWeb3的なやり方ではありません。

 これがどこまで許されるのか、いかにWeb3的なやり方に持って行けるかという点は、今後のDAO運営の焦点となると思います。

日本的な組織や人事制度とは
真逆の性質を持つDAO

 DAOという組織は、トークンをもとにしたインセンティブとスマートコントラクトによる透明性のある自動化がカギです。DAOではこれらをもとに自己組織化を目指します。特定のリーダーの意思ではなく全員の意思によって、組織が有機的に発展していくことを目指すという点は非常に魅力的で、Web3推進を図る人々がこれを理想と考えるのも分かる気がします。