ブランドとCXを1枚の図で描く最初の一歩は、企業にはびこる「三つの認識」を取り払うこと物撮りBOX / PIXTA

ブランドとCX(顧客体験)は、同じ顧客に向き合っている。にもかかわらず、多くの企業ではブランドはマーケティングの仕事として、CXはオペレーションやカスタマーサービスの仕事として扱われている。なぜ、同じ顧客の感情の記憶をつくっているはずの営みが、企業の中では別々のものに見えてしまうのか。そこには組織の捉え方、ブランドの捉え方、企業と顧客の関係の捉え方という三つの認識のずれがある。本稿ではブランドとCXの一体化を妨げるそれらのずれを明らかにし、主語を企業から顧客へ移すことの意味を考える。

ブランドとCXの一体化を妨げるもの

 前回、ブランドとCXは同じ1枚の図で描ける、と論じました。この連載は、ブランドとCXを別々のものではなく、顧客の感情の記憶を巡る一つの営みとして捉え直す試みです。

 しかし、企業の中でこの二つを一つのものとして扱うのは、簡単ではありません。ブランドはマーケティングの論理として語られ、CXは現場改善の論理で語られる。その結果、両者は同じ顧客に向き合っているにもかかわらず、別々の仕事として扱われ続けています。

 なぜ、ブランドとCXは一つのものとして扱われないのでしょうか。

 そこには、三つの認識のずれがあります。今回は、そのずれを順に見ていきます。

認識のずれ1——機能を全体最適にするには組織を変える

 多くの企業が、CXを推進するために部門横断の取り組みを進めてきました。マーケティング、営業、カスタマーサービス、オペレーションの担当者が集まり、ジャーニーマップを描く。部門をまたいだ体験を設計し、改善案をまとめる。CXO(最高顧客体験責任者)やCDO(最高デザイン責任者)といった横断的な役職を置く。いずれも意味のある取り組みです。

 しかし、そこでは多くの場合、ブランドとCXはまだ別々のものとして扱われています。マーケティングはブランドを担い、営業は売り上げを追い、カスタマーサービスやオペレーションは顧客接点を改善する。それぞれが自分の役割を果たしているにもかかわらず、顧客の中でそれらが一つの体験として記憶されている、という前提には立てていません。

 そのため、部門横断のプロジェクトが終わると、組織は元に戻っていきます。マーケティングはブランド施策へ、営業は売り上げ目標へ、カスタマーサービスは応答時間や満足度の改善へと戻る。横断的な役職が置かれても、既存部門の論理が強く、調整が難航します。