オフィスで部下に話をする上司写真はイメージです Photo:PIXTA

日本の職場では、部下と上司が「頑張ります」「頑張ってくれ」という会話を交わす場面がよく見られます。やる気のエールを交換するという意味では、悪くはありません。しかし、この「頑張る」という言葉には、実は部下の思考を止めてしまう危険性があります。いったい、どういうことなのでしょうか。さらに、正しい「頑張る」の使い方とはどのようなものなのでしょうか。(アークス&コーチング代表 櫻田 毅)

やる気を確認し合う「頑張る」という便利な言葉

部下「頑張ります!」
上司「おお、頑張ってくれ!」

 で、もしその後うまくいかないと、

上司「おい、頑張るって言ったじゃないか」
部下「いや、頑張っているんですけどね」
上司「どうするんだ」
部下「もっと頑張ります」

 笑い話のようですが、実際にこのような会話が交わされている職場は少なくありません。もちろん、これでは何も解決しません。しかし、私たちはこの「頑張る」という言葉が大好きです。上司と部下が「やる気」を確認し合う言葉として、これ以上便利な言葉はないからです。

 ただし、この「頑張る」という言葉は、使い方を誤ると部下の思考を止めてしまうことを、上司はよく理解しておくべきです。いったい、どういうことなのでしょうか?

 部下が上司に対して、「頑張ります」とやる気を伝えることは悪いことではありません。問題は、それを聞いた上司が「頑張ってくれ」で終わらせてしまうことです。

 仕事に必要なのは、常に工夫しながら少しでも良い結果を出すことです。特に、最近増えてきている正解のない問題や、難易度の高い問題に取りに組むときには創意工夫が必要です。異なる視点からの発想や、挑戦的な試みなども求められるでしょう。

 にもかかわらず、「頑張ってくれ」で会話を終わらせてしまうと、そのような思考が後回しになってしまいます。「頑張る」には、前向きで心地よい語感があるだけに、その場しのぎの免罪符になってしまうからです。

 では、そのような事態を防ぐために、部下に「頑張ります」と言われた上司は何と返せば良いのでしょう?