一方、10分浴槽を掃除すると決めた場合、前面に出るのは腹側迷走神経だ。10分は拘束されるが、その拘束から解き放たれると「今日も10分できた」と安心感を得ることができる。安全が保障されているのでエネルギーが最適化され、「めんどくさい」は発生しない。

◆また「めんどくさい」になったときは
◇脳は「私」ではない

 私たちが「めんどくさい」に悩まされるのは、脳を上手に使うという発想を持たずに、高い理想を追いかけてきたからだ。「きびきび行動することが道徳的に望ましい」という考えを持っていると、「自分を律すれば道徳的に正しい人になれる」という信念から抜け出すことができない。

 脳は内臓のひとつであって自分ではない。そうやって割り切ることができないがために、自信をなくしたり自分を責めたりしてしまう人が大勢いる。「脳は内臓だ」と割り切ってしまえば、すんなり行動を変えられる。

◇罪悪感の正体を知って、めんどくさいから抜け出す

 めんどくさがりで悩む人の中には、めんどくさいと感じること自体に、罪悪感を持ってしまう人がいる。「めんどくさい沼」から抜け出すには、罪悪感の正体を知らなければならない。

 例えば、やらなければならない資料作成を目にしたとき、めんどくさくて「見ないふり」をしたとする。すると、脳は「見た」のに「やらない」ことを理解不能なエラー反応と見なして、注意を高める。資料を見て「見ないふり」をした行動は記憶され、神経のつながりができて自動化され、同じ状況でまた「見ないふり」をする。すると、同じ行動をとることを期待していた脳内では、予想通りの出来事に大量のドーパミンを分泌し、「見ないふり」への期待が高まっていく。この繰り返しで「めんどくさい沼」から抜け出せなくなり、罪悪感を抱くようになる。

 神経をつなぎ換えるためには、脳の「また見ないふりをするぞ」という予想を裏切らなければならない。資料を触って感覚データを脳に届けたり、行動をつなげて少しでも資料作成に着手することが有効だ。「めんどくさい」と口に出して自分を疲れさせるのではなく、「資料を作成する」と目の前の事実を口にすると、次の作業がわかりやすくなる。そうすれば、もう「めんどくさい」を恐れる必要はない。