ビジネスの世界で注目を集める「心理的安全性」という言葉。その重要性は分かっているけれど、具体的にどのようなコミュニケーションで心理的安全性の高い環境を整えればいいのか分からないリーダーも多いのではないでしょうか。そんな問題を解決する教科書が『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』です。本書では実際のオフィスで使われた声かけ1000万件超のうち、特に効果の高かった100件を紹介。NG表現とOK表現の言い換え例を見せながら、心理的安全性を高める声かけを理解していきます。本連載では、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』で掲載した声かけをピックアップして掲載。まずは具体的な事例紹介に入る前に、「そもそも心理的安全性とは何か」について解説した文章を、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』から抜粋して紹介します。

新入社員をほめるときに守るべき唯一のルール<br />仕事の質や量よりも、貢献度合いに感謝すること

 苦手な仕事をメンバーに助けてもらったとき、リーダーが「いやあ、助かったよ」とお礼を言う場面をたくさん見てきました。この言葉に問題はありません。ただ、それをもっと心理的安全性を高めることに役立つ声かけにすることもできます。

 近年、「ダイバーシティ」という言葉が当たり前のものとなり、多様性を尊重することが求められています。多様性を活かした経営の成功例を目にすることも多くなりました。

 心理的安全性を考える上でも、多様性は大切です。年齢や役職に関係なく、誰しも、長所と短所、強みと弱み、得意なことと苦手なことを持っています。そうした「違い」を尊重し合って、凹と凸を組み合わせるようにすると、組織の心理的安全性は高まります。

 その際にポイントになるのが、メンバー間でフラットな人間関係を作ることです。リーダーとメンバーの場合なら、その関係性が「上下関係でなく、役割の違いにすぎない」という認識を共有しましょう。それに合わせて、コミュニケーションも可能な限り「フラットさ」を確かめ合うものにしてください。

新入社員をほめるときに守るべき唯一のルール<br />仕事の質や量よりも、貢献度合いに感謝することPhoto: Adobe Stock

 今回のシチュエーションなら、リーダーは「自分にも苦手なことがあること」と「メンバーと同じように、リーダーも『助けられる』側にもなること」をメンバーに伝えると良いでしょう。

 例えば苦手な仕事について、あえて「私が苦手な仕事」と表現して言及するのです。弱いところは「弱いところ」としてメンバーに認識してもらう。その方が、関係がフラットになります。

 ただ「助かりました、ありがとう」と伝えるより、助けてくれたメンバーに「私が苦手な仕事を、君は自然にできてすごいなあ」などと称える言葉を投げかけてください。すると、「リーダーを助けた」「組織に貢献できた」という実感がメンバーの中に育ちます。これが自己肯定のきっかけになります。

 リクルートマネジメントソリューションズの「新入社員意識調査2022」によれば、新入社員の仕事で重視する1位は、貢献(人の役に立つ、感謝される)となっています。責任、金銭、競争といったものよりも貢献を重視するという価値観です。

新入社員をほめるときに守るべき唯一のルール<br />仕事の質や量よりも、貢献度合いに感謝すること

 このことからも、特に若手社員と対話をする上では、貢献に対する感謝と貢献欲求を満たすことが重要だということが分かります。

「こういうことをすれば自分は役に立てる」という実感を持ったメンバーは、自らの強みやチーム内でのニーズも理解し、そこにも自信を持てるようになります。