ビジネスの世界で注目を集める「心理的安全性」という言葉。その重要性は分かっているけれど、具体的にどのようなコミュニケーションで心理的安全性の高い環境を整えればいいのか分からないリーダーも多いのではないでしょうか。そんな問題を解決する教科書が『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』です。本書では実際のオフィスで使われた声かけ1000万件超のうち、特に効果の高かった100件を紹介。NG表現とOK表現の言い換え例を見せながら、心理的安全性を高める声かけを理解していきます。本連載では、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』で掲載した声かけをピックアップして掲載。まずは具体的な事例紹介に入る前に、「そもそも心理的安全性とは何か」について解説した文章を、『心理的安全性を高めるリーダーの声かけベスト100』から抜粋して紹介します。

意外とやらかしがちなオフィスの地雷ワード部下に「自信持て」と言ってはいけない

 自信がないためにあまり発言できない若手社員を見かけることがあります。そんなメンバーを発奮させたいと思って、つい「自信を持てよ! そんなんじゃ出世できないぞ」と言ってしまう先輩やリーダーもいると思います。が、これは正直、有効とは言えません。

 そもそも、自信がない人に「自信を持て」と言っても、言われた方は戸惑います。「じゃあ、どうすれば自信が持てるようになるんですか」と悩むだけでしょう。緊張しているときに「緊張するなよ!」と声をかけられるのと一緒で、励ましとしては、ほぼ意味をなしていません。こうした言葉をかけても、心理的安全性は高まりません。

メンバーに自信を持ってもらうには

 私自身、それほどポジティブな性格ではなかったので、社会人になりたてのころにはよく、先輩やリーダーから「自信を持て!」と言われてきました。

 しかし、そんな言葉で自信が湧いたことは一度もありません(むしろその場から消えたくなりました)。

 Beforeは、自信を持たせるための発奮材料として「出世」を取り上げています。これでは、出世に興味のある人にしか言葉が響きません。見方を変えると、人事権や評価権を持つリーダーが、それを利用しているようにも感じられます。

 そもそも、近年の若い世代は、出世(同一企業内での職位が上がること)に関心のない人が増えています。パーソル総合研究所の2019年の調査によれば、アジア主要国の中でも、「出世したい」と考えている人の割合は日本は最低だったそうです。つまり、若手社員にとって「出世」は、インセンティブとして効かないのです。また、博報堂の調査においても、会社の中で出世したい人は2020年の最新の調査で14.9%に留まっています。

意外とやらかしがちなオフィスの地雷ワード部下に「自信持て」と言ってはいけない

「出世できないぞ!」と脅しても「笛吹けども踊らず」。ほとんど意味はありません。むしろ「このリーダーは評価を利用する人なんだな」と思われるので、得策ではありません。Beforeの声かけでは心理的安全性は低くなります。