『週刊ダイヤモンド』10月29日号の第一特集は「選ぶ介護」です。高齢の「おひとりさま」や「おふたりさま」(夫婦のみ世帯)の急増は、親の介護だけでなく、自分の介護をどうするか、という問題を投げかけています。人材と財源の不足で、今後、介護保険のサービス抑制や利用者の負担増は避けられないだけに、介護難民にならないためには、早めの準備が肝心です。利用者に参考になる情報を集めました。(ダイヤモンド編集部 田中久夫)

2割の自己負担対象者が増える方向
フルコースの在宅介護は困難に

 要介護になっても最期まで住み慣れた我が家で、と願っている人は多いだろう。その願いをかなえるのは、家族とお金である。

介護人材は2025年に32万人不足!要介護者600万人時代に「介護難民」にならない備え高齢の「おひとりさま」や「おふたりさま」の急増は、親の介護だけでなく、自分の介護をどうするか、という問題を投げかけている(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 高齢者の終活サポートを長年行ってきた黒澤史津乃さん(現・OAGライフサポート・シニアマネジャー)が語る。

「在宅介護の限界は排泄です。赤ちゃんのオムツ替えと違って、高齢者の下の世話は家族もやりたがらないし、されるほうも嫌がる。かといって、オムツをパンパンにしておけないので、ヘルパーさんを長時間入れると、自費負担が増えてあっという間に月の費用が30万円をこえてしまう。それなら、20万円以下の費用で済む施設に移るというようなケースが多いですね」

 年末に決着する介護保険の改正論議では、2割の自己負担対象者を増やす方向で話が進められている。それが現実となれば、所得水準よって負担が倍増する利用者が増える。湯水のようにお金が使えなければ、フルコースの在宅介護は夢物語で終わるだろう。

なり手が少なく有効求人倍率は15倍
高齢化が進むヘルパーは絶滅危惧種

「在宅介護は崩壊寸前」と、業界関係者は口をそろえる。

 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに併設する事業者を除くと、ホームヘルパーを確保できず、廃業する例が相次いでいるからだ。

 ホームヘルパーは高齢化が進み、80代の現役も珍しくない。有効求人倍率は約15倍。一人の採用に15社が群がる異常事態が続いている。業界ではホームヘルパーを“絶滅危惧種”と呼ぶ。

 なり手が少ないのは当然だ。将来がある若い人にとって、施設で働いたほうが安定した給料が見込め、キャリアアップも期待できる。しかも、訪問介護は危険を伴う。

 今年1月、訪問診療先で医師が殺害されるという悲惨な事件が埼玉県内で起きた。この事件を受けて県が行ったアンケート調査に、医師や看護師、ホームヘルパーの半数が暴力やハラスメントを受けた経験があると回答している。

 埼玉県は警備会社と契約し複数で訪問するための補助金を出すなどの対策を検討しているが、財源に余裕のない自治体ではとうてい無理な話である。

 人手不足解消の切り札として期待される外国人も急激に増えない上に、言葉の問題から、ほとんどが特別養護老人ホーム(特養)など施設での採用になる。

 日本の財政が悪化するなかで、政府もない袖はふれないので、介護保険に回す財源は今後も多くを期待できない。